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アリファリング No.15 搭乗

2010年02月28日 23:46



 フェイル達は露店の立ち並ぶ街の商店街から少し離れた辺りに辿り着いた。
 そこは商店街とは少々異なり、その雰囲気はより冒険心のそそられるものだった。

 歩き行く人々はまさに今、飛行船に乗らんとするか、飛行船から降り立ったか。
 いずれにしても誰もが開放感に満ちたそれを見て、フェイル達もその調子に乗せられないはずもない。

 そう、もうここは飛行船乗り場を眼前に控えている、港部になる。


「早くチケットを買おう」

 フェイルはその中でも一番、場の空気に乗せられていた。目を冒険心に駆り立て、ギラギラと光らせている。
 今にも歩み出そうなその足は疼く事を止めないらしい。


「わかったわかった」

 その後ろをヨシアとアリファが着いて行く。
 全く心が湧き上がらなかったかと言えば、それは嘘になるが、フェイルを高いテンションを見ていると、それも消失する。

 二人がチケット売り場に着いた頃、フェイルは既に余裕を持ってそこにいた。
 ヨシアがもうチケットは買ったのかと尋ねると、フェイルは嫌に上唇を伸ばした。


「三人で27000メルだって。た、高いから……7割ぐらいだして」
「何が7割だ! そういう時は割り勘だろ馬鹿野郎」

 がめつさ全開のフェイルの対し、ヨシアは厳しく言葉を返した。
 フェイルは仕方ないといった様に、半分の13500メルを出した。アリファに渡した指輪代が響いているらしい。



「27000メルですね、どうも有難う御座いました」

 販売員のおじぎがなぜか嫌らしく見えてしまう。
 フェイルは先程までのテンションから一転、ヨシア達と変わらぬテンションに逆戻りしていた。


「いきましょ」

 アリファに呼ばれてフェイルは歩き出した。
 港口に大きな飛行船が控えている。この船に乗ってフェイル達はルディブリアムへと向かうのだ。


 船に乗る手前、ヨシアは歩きながらフェイルに疑問を問いかけた。

「フェイル、販売員はいつ頃到着予定だっていってた?」
「今が夕暮れ前の便になるから、船内で一泊になって到着は朝だろうって」

 ヨシアは納得した様に頷く。大体、想定していた到着と変わらなかったらしい。


「まあそんなもんだろ」
「明日……明日、私の中の悪心は……」

 アリファは少々重い顔で呟いた。それを見たヨシアは背中をポンと叩いて「大丈夫だ」と明るい表情を見せた。
 隣ではフェイルも手で握って、任せろ、と示している。アリファは安心感を得ると「そうね」と微笑んだ。


 船の前に着くと、乗組員らしき人物が立っていた。

「三名様ですね。チケットの提示をお願いします」

 フェイル達は順々がチケットを提示していくと、乗組員らしき人物は確認して船の中へと手で誘導する。
 誘導された先へと進んでいくと、とりあえずホールと思われる船内の広場に着いた。


「これでとりあえずは船内に着いたな」

 ヨシアはうんと気伸びをした。フェイルとアリファもその場で一息つく。

 子供と仲良く手を繋いでいる親子連れ、謎の見格好をした冒険家、ホールにいる人物は様々だった。
 フェイル達はとりあえず落ち着くと、三人部屋の鍵を貰いに、ホール端の受付所へと向かった。









搭乗完了。取り敢えずは、一息つけり。

次回、船上の一息。


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アリファリング No.14 これ以上無い気持ち

2010年02月26日 00:18


「お待たせ……あれ?」

 急いでかけ戻ったフェイルは、ヨシアがいない事に疑問を抱いた。辺りを見回すと、アリファもそれを察する。


「ヨシアなら喧嘩を仲裁をしに行ったわよ、すぐ戻るって」

「あ、そういう事か」

 フェイルはそれを好都合だと思った。今からフェイルがしようとしている事は、ヨシアに見られているといささか恥ずかしいものがある。


「それなら丁度いいや、アリファ、君に渡したいものがあるんだ」

 フェイルはポケットの中をあさると、雑貨屋で購入してきた指輪を取り出した。木製の指輪で、ニスで深みのある光沢を醸し出している。アクセントはダイヤモンドに似せたガラス細工らしい。

 アリファはそれを見て、しばし戸惑った表情を見せた。顔を赤らめながら、お礼を一言、頭を下げながら呟く。


「あ、ありがとう」

 それを見たフェイルはアリファの手を優しくとって、指輪をそっとはめた。ゆっくり見上げるアリファに微笑みを返す。


「俺全然メル持ってないから、こんな安作りの指輪しか買ってやれないけど、アリファが喜んでくれるなら……」

「もちろん、こんなに嬉しい事は今までに無いわ!」

 フェイルはアリファに抱きつきたくてたまらなかったが、それを必死に抑え込んだ。この指輪はそんな卑猥な結果を求めた買ったもの等ではないから。



「そこまで喜んでもらえるとは思ってなかったよ」

「プレゼントなんて、始めてだから……」

 誕生してこの方、重圧ばかりを受け続けていたアリファにとって、自分の心の充実こそ、この上なく欲している欲求であった。フェイルは話を続ける。


「父さんが昔いってたんだ、どんな陳腐な物でも、それにこれ以上無い気持ちがこもっていれば、その物にはその人の心が宿るんだって。だから俺はこの指輪を君にプレゼントした。これ以上無い気持ちを込めて」

 恥ずかしそうに頭を人差し指で掻くフェイルを見て、アリファは下目で優しく指輪を見つめた。


「そのはず……だってこの指輪、こんなにも温かい」

 それを聞いてフェイルは思わず笑みをこぼした。


「だから苦難が起こった時、その指輪を通して俺を感じてくれ。恐怖に心が凍えそうな時、俺の心がアリファを必ず温めるから」

「うん。やっぱりフェイルが、私にとって一番温かい」


 二人にどぎまぎとした空気が流れる。これ以上何という事もなく、ただ無意味に時間だけが経過していく。それが破ったのは帰ってきたヨシアだった。



「おっす! 仲裁終えてきた」

「ど、どうだった!? ちゃんと仲裁出来たか」

 フェイルは無理矢理ながらも、何事も無かったかの様な自分を演じた。それを見てアリファも不器用ながらそれを合わせる。


「当たり前よ、喧嘩してた奴等、逃げていったぜ」

 ヨシアは明らかに違和感のある二人から事を済んだのだと察し、アリファの方をちらりと見た。アリファのはめていた指輪が目に止まり、ヨシアは口元とニッとさせる。


「何だ? お前今笑ったろ?」

 フェイルが疑問気に尋ねる。よもやヨシアが気を利かせてその場を離れた等とはまるで検討もせずに。


「何でもねえよ、ただすがすがしいだけだ!」

 フェイル達は飛行船乗り場に向かう。青空好調、夕方を控えるその空はあまりに軽快で、今後の旅への気持ちを爽快とさせてくれる。









足は軽々、軽快はステップ。前方異常無し。

次回、飛行船搭乗。


アリファリング No.13 Lively town

2010年02月24日 18:58



 フェイル達がリスに入ってまず最初に感じた事は活気だった。


 流石に船が他の大陸と行き交いする中心部だけあって、街全体の雰囲気が沸き立っている。

 今から旅行か旅に出かける、ないし帰路に着こうとしている家族連れの一家から冒険心をたぎらせている冒険家まで、様々な目的を持った人々がここに集結している。


 故に商人にとってもこの環境は好ましいらしく、先程からよく露店売りが見受けられる。日常的な必需品から、少し奇抜なお土産品までその内容は様々。



「賑やかな街だな」

 フェイルが気分揚々な足取りを見せると、アリファもそれを見て楽しそうな表情を浮かべた。ヨシアが少し冷静な発言を一言。

「旅行者や冒険家と商人の需要供給が見事にマッチしてんだな、そうでなきゃこんなに活気溢れた街は生まれねえ」

「確かに……両者の利害があっての街というわけね」

「ふ、ふーん……」



 飛行船乗り場に向かう最中、一人話についていけなかったフェイルは、気紛らわしに辺りをキョロキョロと見回していると、雑貨品、主にアクセサリー等の売ってある露店を見つけた。


「ちょっと二人とも待ってて、買いたいものがあるんだ」

 フェイルは屋台に向かって走り出した。空気を察したヨシアはその場から離れようと、辺りを見回す。



「おい、お前ちょっと表に出ろ!」

「望むところだ!」


 どうやら酒屋で真昼間から喧嘩が起こっているらしい、その場では見えなかったが、大きな声が耳を刺激して状況を感じ取った。いい理由が出来た。

「アリファ、向こうで喧嘩してるみたいだから仲裁に入ってくる、俺もすぐ戻るからフェイルが帰ってきたらそう伝えといてくれ」

「え……うん、わかった」

 アリファはきょどった様子だったが、ヨシアは目をやらずにその場を離れた。今振り向いて思わず立ち止まってしまう……その心配を捨てる為にヨシアは振り向かなかったのだ。



「てめえに文句垂れられる筋合いなんてねえんだ!」

「それはこっちのセリフ……ん? 何だお前?」

 殴り合いに発展しようとしていた大男二人の間にヨシアが割り込む。

「てめえ、なめてっと……」

 ヨシアに襲い掛かろうとした一人の大男はそこで唾を飲み込んだ。振り被った拳をピタリと止める、視線の先には、銃を構えたヨシアの姿がある。


「ギャラリーがビビッてんだろうが、喧嘩は他所でやれ!」

 ヨシアは銃にビクついた大男に体を反転させながら根限りにこめかみを蹴り飛ばした。

 自分で喧嘩は他所でやれと言っておきながら、その場で喧嘩を始める異常さに、もう一人の男は恐れをなし、その場から逃げていった。蹴られた大男も起き上がると、それに続いて逃げていく。


「っぷう、もう大丈夫っすよ、ギャラリーの皆さん」

 ギャラリーは突然の出来事にただきょとんとしていた。









 活気よ、どぎまぎの高揚心よ。

 次回、想いは形を成し。


アリファリング No.12 過ぎ去りし虚空

2010年02月23日 18:12



 先手を仕掛けたのはフェイルだった。素早く剣を右斜めに振り、ゴーレムの左腕に一撃。そのまま反動に合わせて右腰に一撃、計二連撃。

 が、しかし、剣の当たった二箇所はいずれも少し削れた程度でとても外傷を与えたと呼べる程度のものではなかった。


「やっぱり外面は堅牢な鉱物で固められてるから駄目だな、普通の一振りじゃまず崩れない」


 続くはゴーレムの反撃、両手の平を組んで上が腕を振り下ろす。そこそこのスピードはあるもののやはりは動きは遅い為、フェイルはそれを回避するととりあえず一歩距離を置いた。


「遅いけど一撃でももらえば手痛いからな」

「拉致があかねえ、簡単な所にあんだろが、弱点が」


 そういってヨシアはゴーレムの赤く灯った目を狙って弾丸を放つと、それは見事に的中し、ゴレームの目となっていた機械はひしゃげて赤く灯るのを止めた。

 確かに周りを覆う鉱物は堅牢だが、視界にそれを作るわけにはいかない、目こそがゴーレムにおける最大の弱点だったのだ。


「いけフェイル! そのままとどめを……」

 叫ぶヨシアだったが、それに反してフェイルは剣をホルダーに収めた。ヨシアが納得いかないように銃口をゴーレムへ向けると、それをも制す。


「見ろ、奴の敵味方を判断する基準は目だ。その目が壊れた今、もうあいつは何もしないよ」

 フェイルの言う通り、ゴーレムはその場で右往左往し、視界が失われた事を確認すると、動く事を止め、その場に立ち尽くした。


「何百年も死んだ主人を待ち続けてゴーレム達は徘徊しているんだ、そんな奴を俺は不用意には殺せないよ。生きてるんだから」

「そうだな、だが、目的も失っているのにそれも知らずにただ無我夢中になっているあいつを見ると、俺は空しくなるぜ」


 三人は感傷に浸っていた。特にアリファ、どこか似た境遇にある彼女はこのゴーレムに一番感傷を受けた。皆がその場に立ち尽くし、何となく呆然としている中、それを破ったのはフェイルだった。



「……あ!」

 フェイルは思い出した様にゴーレムの下へと走り、10メルを拾い上げた。満面の笑みを浮かべてそれを自分の財布にしまい込む。


 それを見てヨシアとアリファは頭に手をやっていた。

「本当に大丈夫かしら……」

「ムードぶち壊しだぜ、バッドボーイもいいとこだ」


 器を小ささを露呈してしまったフェイルはそれを見てハッとすると、申し訳なさそうに肩を潜めて二人の下へと戻った。今一度、ゴーレムの姿を確認した後、フェイル達は背を向け歩き出した。もう後ろは向けない、振り向いても過ぎ去った虚空しかないのだから。



 その後の道には何という困難もなく、時たま襲い来るデンデンやスライム等のモンスターを軽くあしらいながらフェイル達は突き進んでいった。淡々かつ感慨深かったリスへの道のりは、フェイル達に大きな何かを刻み付けていた。


「見えてきたぞ、リスの街だ」

 ヨシアがようやくといった具合に呟くと、その先には確かに大きな港町の姿があった。長かった徒歩の旅路もこれでようやく一段落。フェイル達は走って港町まで駆け込んだ。

 船出、ここより。偉大なる大きな一歩、眼前に。









虚空を超えて、我等また一つ育ち行く。

次回、大きな一歩への印と勇気。


アリファリング No.11 Unhappiness of ten

2010年02月22日 17:15



「起きて、もう朝よ」

「もう少し……!?」


 まだ眠ろうとしていたフェイルは、僅かに目を開いたその瞬間、目を丸くした。フェイルがしかと感覚を取り戻し、その場でジタバタしている頃には事は終わっていた。

 同じくヨシアもそれを受けると、フェイル同様の反応を見せた。二人がここまで動揺したのは、目を開くとアリファの顔が寸前にあったからだ。


「あ、朝から心臓に悪い! ……というか嬉しいというか」

 ニマニマとするヨシアをフェイルは横目で見る最中、ようやく今日が旅立ちの日であるという事を思い出した。


「そっか、俺達は今からリスに向かわなきゃならなかった」

 当然の事を呆然とフェイルは言い放った。ヨシアも「だな」と一言言って頭を掻き毟る。アリファは自らの事である故、一番にやる気を持っていた。


「さあ、いきましょ!」

「流石にちょっと待ってよ……、体が完全に覚めてからでも遅くはないだろ」


 やる気満々であるアリファをフェイルが止めた。確かに万全を期さず外に出ないにこした事は無く、フェイル達は完全に体が冴えだす小一時間を深く感じ取りながら過ごした。

 扉が勢いよく開く!



「おっしゃ! いい晴天だ、空が日差しが気持ちいい」

 フェイルは思いっきり気伸びをした。アリファもヨシアも清々しいといった表情を見せる。ここから始まるのだ、大いなる旅立ちは。


 といっても、動いてしまえば何とない旅行と然程変わる事も無く、名残惜しくもヘネシスを旅立った後も、平坦な草原をただ突き進むだけであった。

 モンスターも気性が荒いもの以外は何という事をしなければ自分から襲ってくる事は少ない。旅はこと面白げも無く淡々と進行していた。



「暇だ」

 ヨシアが口元をダラリと開きながら言う。

「平和ってじゃない、いい事よ」

 アリファが正論を返す。


 問題無くリスへ向けての進行は進み、半分辺りに到達した所で事は発生した。他の街との分かれ道で、道が複雑化していく最中、最初に気づいたのはアリファだった。


「ねえねえ、あの大きな石像みたいなモンスターって何?」

 二人もそれを見て、フェイルを目を点にしていたが、ヨシアはそのモンスターを見てもの珍しげといった表情を浮かべていた。

「ありゃゴーレムだな。昔ここらに寺院があった頃、その警備をしていたモンスターだ。ここいらまでくるのは珍しい……が、何もしなけりゃ危害はくわえねえよ」


 ヨシアは物知り気に語ったが、フェイルはまだ残り不安要素をポツリと漏らす。

「って言ってもそのゴレーム、俺達の通り道にいるぞ?」

「大丈夫、隣通ってもぶつかったりしなけりゃ問題ないから」


 見兼ねたヨシアはいの一番に自分がゴーレムの横を素通りしていった。確かに人が一人通る程度の幅なんて余裕を持ってある。続いてアリファも横を素通りしていく。


「何だ、全然大丈夫じゃん。それじゃ俺も……あ、10メル!」

 フェイルもゴーレムの横を素通りしようとした時、地面に10メルが落ちているのを発見した。フェイルはそれを取ろうと頭からしゃがみ込むと、その時頭を何かに強く打ち付けた。

「痛っ! ……あ」



 その場にいた全員、顔面蒼白。フェイルが頭を打ち付けたその先にいたのは紛れもなくゴーレム。数秒の沈黙の後、ゴーレムの目が赤く灯り、その照準がフェイルに定まる。


「10メル如きで何やってんだお前ぇ!」

 ヨシアが叫んだ。フェイルは慌てて剣を抜く。ヨシアもホルスターから銃を取り出す。旅最初の戦闘は余り不祥事で余りに哀れな金欲による、王道的な展開だった。









世界広し、フェイルの器狭し。

次回、戦闘。刹那の展開を見逃すな。






コメント返信


>紅蓮の双翼

頑張る! 小説読んでくれてるなんてサンキュー極まりない。

アリファリング No.10 決意し夜に意味を捧ぐ

2010年02月20日 10:34



 フェイルの表情が一気に青ざめていく。確かにそういう事態が有り得るという事はフェイルも理解していたが、それを真に起こる事等考えてもいなかったからだ。

 横風が痛い程に横暴。


「そんな事、俺が起こさせない。あいつは俺は護るんだ」

「その言葉がより重く責任をなす程、お前は自分の首を絞める事になるんだぞ? わかってそんな軽率な事を言っているのか?」


 余りに核心。

 ヨシアの言葉に反論する余地等、何も無かった。実際もし、明日アリファが不意に死んでしまえばフェイルは自分がどうなるか等、考えもつかなかった。

 絶望を一周したその先に待つ感情なんて知り得るわけが無い。



「決意する時は今何だぞ。別にお前がアリファの悪心を葬る事に反対はしない。だが、万が一を想定するなら、アリファには余り肩入れしすぎるな。それがお前の為であり、アリファの為だ」


 言葉を失った佇むフェイルを惨めに照らすかの如く、月夜が雲から逃れていた。痛々しい光がフェイルを突き刺す。

 フェイルは幾分か目を瞑ると、自分の中で心境を整理したのか。落ち着いた様で目を開いた。心には何か結論を抱いている様に、決意を胸に。



「それでも俺はアリファを護りたい。俺はアリファが好きだから。どんなに首を絞められようとも、それが俺の決意だ」


「一目惚れって怖いねえ」

 ヨシアは思わず微笑みをこぼした。自分が導こうとした答えとは違う答えがでたものの、ヨシアはフェイルの答えに十二分に満足していた。そういう意味での笑みだ。


「それがお前の決意なら、絶対それを捻じ曲げるなよ。アリファはお前が護れ。あんなベッピン死なせたら承知しねえぞ!」

「最初からそのつもりだ!」


 フェイルとヨシアは握った拳と拳をゴツリとぶつけた。

 決意し夜に意味を捧ぐ。



 その後、二人は共に満足すると、また扉を開けて静かに中へと入っていった。アリファのぐっすりと眠る顔を見て、二人は思わずニヤニヤとした。この笑顔を絶対に護り抜けるように今、決意固し。


 フェイルが「おやすみ」というとヨシアも「おやすみ」と返した。二人は明日のリスまでの道のりの為、じっくりと睡眠をとる。満足した心には直ぐに十分な休息が注がれ、堕ちていた日がいつの間にか顔を出そうとしていた。









決意し夜に意味は捧がれた。

次回、朝を迎え一行は向かう。


アリファリング No.9 Realistic lie

2010年02月19日 18:24

 

 アリファと同じく眠りについていたフェイルは目元をゴシゴシと手で拭いながら返事を返した。目を細くあけ、ヨシアを見つめるが、ヨシアは真剣な眼差しでフェイルを見つめていた。


「話したい事がある。彼女が起きたらまずいから外で話していいか?」

 ヨシアはつま先立ちでそっと歩き、扉をゆっくりと開いた。冷たい風が僅かに部屋を吹き抜ける中、ヨシアは外に出た。

 フェイルも事の重大さを寝起きながらに察知し、大きな欠伸で目尻を濡らした後、それで目垢を拭い取って、外に出た。扉が静かに閉められる。



「何だよ」

 フェイルは既に民家の壁に寄り掛かっていたヨシアを見て、同じく寄り掛かると尋ねた。


「夜空、綺麗だと思わねえか?」

 ヨシアは満天の星空を両手で大きく示した。無数の星々を統べる様に存在する月。時々に鳴く梟がどこか悲しげな哀愁を漂わせていた。

 横風を自分の後ろめたさを映している様で少し背筋を凍らせる。どうしてこんな暗転に人は魅了されるのだろうか? 不穏の中に、人は何か感じている。

 この暗闇に興じて、世界に闇に沈む事に人は臆する癖に、興味も抱く。


「そうだな、余りに偏屈で本心から遠くかけ離れた、そんな感傷に浸る。っていうか、それだけかよ!?」

「なわけねえだろ。あいつだよアリファ、アリファ・ベルモンドの事でちょっとさ」


 ヨシアは空にふぅっと息を吐いた。白ばむそれは鮮やかすぎる曇天に似ている。実に奇怪。


「アリファが、どうかしたのか?」

 フェイルは途端に眼差しが変わった。それを見てヨシアは尚更、息を吐き出す。今度のは溜め息だ。



「お前、アリファに肩入れしすぎてねえか? いくら突発にして運命的な出会い、かつその相手がベッピンなんて夢の様な事が起こったからって、肩入れしすぎだ」

「あいつの、私を殺してっていう言葉を聞いた時、心が酷く痛んだ。あいつの、世界を背負い込んだ涙を見た時、心が酷く熱くなった。それだけだよ、俺の動く理由なんて。肩入れなんて軽い言葉を使わないで欲しい」


 フェイルのそれを聞いて、ヨシアは暫く夜空を見上げると、突然フェイルの想像だにしない返答を返した。



「至災の間に悪心を葬れば、彼女も共に命を葬られる」

「何だと!?」


「嘘だよ」

 ヨシアはこめかみを二回叩くと、指先でクルクルパーを描く。フェイルは堪忍袋の尾を切らし、ヨシアに飛び掛った。


「てめえ、言って良い事と悪い事ってのが……!」

「静かにしろ、アリファが起きるだろ。……もし、もしだ。俺の言ったそれが本当だったとしたらどうする? 本当にアリファが死んじまったら、お前はどうする?」


 フェイルは感情を昂りを歯ぎしりで押さえ込みながら、掴んだ胸倉を離した。ヨシアの言った事の意味等、到底理解する耳など持たず、荒げれない声で呟いた。


「あの時のアリファに嘘は無かった、絶対に。お前にあいつの何が……」

「何もわからない。でも、あいつが世界の運命を背負ってる事はわかる。それがどういう事だかわかるか? 何が起きてもおかしくないんだ。有り得ない事もこの状況で有り得るに変わる。つまり……」


 ヨシアは空を見上げた。フェイルもその言葉を聞く内に冷静さが取り戻されると同時、ヨシアのいう現実も真に感じ取る。本能的に空を見つめると、そこには星々と月を覆い隠す一転の曇りがあった。


「想定外の事態が発生して、アリファが命を落とさないとも限らない」









現実の刃を懐に感じて、少年は何を思う?

次回、決意。結果を求めて。






コメント返信


>みーるさん

いえ、このブログを観覧して貰えるだけでも有り難いです。

良ければ感想等待ってます。

メイプルの年齢層故、小説ブログは中々支持されないので (爆)

アリファリング No.8 Expert of gun

2010年02月18日 22:51

 

 準備といってもヨシアの準備は準備と呼べる程のものでもなかった。

 ヨシアはテーブルから銃に加え、多種の弾丸の入ったホルスターを取ると、ちゃんと全ての種の弾丸が入っている事を確認し、ホルスターを腰にまいた。


「おし」

 以上。


「早いなおい」

 フェイルが余りに淡白すぎるヨシアの準備に言葉を返すと、ヨシアは「じゃあもう少し時間をとってもいいか?」と言って銃をホルスターから素早く抜き出した。

 そのまま少しフェイル達から離れると、銃を壁に備え付けられた鏡目掛けて構えた。


「充填している弾丸は六発……いくぜ」

 ヨシアは呼吸を整えた。的は鏡に映るティーシャツの的模様。ゆっくりと構えた腕を上げていき、丁度照準が的模様の中心に重なった時、ヨシアは六発の弾丸を全て打ち放った。

 フェイルとアリファは銃声に思わず耳を塞ぐが、ヨシアは発砲の反動にもまるで動じず六発を放ち終えた。


「上出来だろ、見てくれアリファ、この俺のグレートな腕前を」

「お、俺は見なくていいのな……」

 ムスッとするフェイルに対し、アリファは鏡を覗き込むと、鏡に映るヨシアのティーシャツの的模様は中心からいびつによがんでいた。弾丸は六発とも全く同じ所に的中したらしく、鏡どころか壁ごと綺麗な丸穴が開いている。


「す、すごい! 六発全部同じ箇所に撃つなんて」

「だろ、だろ!? やっぱ見る目あるなあ、アリファは。フェイルと違って」


 ヨシアが方眉を吊り上げながらホイホイと挑発する様な眼差しをフェイルに浴びせると、フェイルは頭にきたのか、それを嫌味で返した。


「そうだな、お前は俺と違うわ。なんたって最初はヘネシスの教官、ヘレナ様にマンツーマンで弓の極意を教えてもらっておきながら、ヘレナ様に告白して振られるや否や、銃に鞍替えしたんだもんな。俺には出来ないよ」


「ば、馬鹿お前っ!」

 ヨシアはアリファからの細い視線を感じて、背中を丸くした。


「参った、調子乗って悪かった」

「でも確かに銃の腕前は半端ないからな、俺だってそこを見込んでお前に頼んだわけだし」

 フェイルは高々と笑うと、それにつられてアリファもクスリクスリと笑い出した。ヨシアも溜め息つきたげに笑い出す。ひとまずの安息、ここにて訪れたり。



「んで、ルディブリアムにはどうやって行くんだ?」

 ヨシアが尋ねると、フェイルは予め考えていたらしく、すぐに言葉を返した。

「一応、リスにルディブリアム直行の便があるからリス経由で。ちなみにリスまでは徒歩な」

「そうか、なら今日はここに泊まってけ。もう夕暮れだし、行くなら朝から向かった方が、夕暮れ前には着くからいいだろ」


「そうだな、気づけばもう夕暮れか……、今日は何だか早かった」

 この時はアリファは正直、この汚い家で一夜を過ごすのかと思ったが、そこは好意故、敢えて口に出さなかった。かくして、フェイルとアリファは、新たな仲間ヨシアを加え、一夜をボロ民家で過ごした。



 その一夜の夜中、梟の珍妙な鳴き声が家内に小さく響く中、眠りにふけるアリファを確認した後、ヨシアはフェイルにアリファを起こさぬ様、声を掛けた。


「ちょっといいか?」

「ん……何だ?」









銃使い(ガンマン)は頼もしく、梟鳴く夜に何が?

次回、持たれり刃は懐に。






コメント返信


>みーるさん

そんな気持なら最初からやってないですよ (笑)

アリファリング No.7 Necessary peace

2010年02月17日 21:22



「さて、必要な物はあらかた揃ったし、そろそろ行く?」

「私はいつでもいいわよ」

「それでさ……」


 

 そこでフェイルは少々気まずそうにアリファを見つめた。アリファが疑問気な顔を浮かべると、額を人差し指でポリポリと掻きながらフェイルは呟いた。


「一人一緒に連れて行きたい奴がいるんだけど、いいかな?」

「別にいいけど?」


 アリファの存外気にしていない様子を見てフェイルはホッとした。なにしろ、つい先刻出会ったばかり故細かい性格等が把握出来ていないのだ。


「ならよかった。ヨシア=ロダンっていうんだけど、俺と同い年で中々頼もしい奴だからさ、いると安心出来るし」

 実際、フェイルにとってアリファとの二人旅も捨てがたくはあったが、何が起こるか分からない上、世界の存亡に関わる以上、私欲等と悠長な事をいうわけにもいかなかった。


 フェイル達は民家を後にすると、ヨシアの住む民家へと向かった。ヨシアはフェイルと違ってごく一般的な民家街に住んでいるので、街中を二人は通る。

 道中、民衆にやたらアリファが見られる事にフェイルは不安を覚えたが、すぐにそれは黒翼の存在が悟られたというわけではなく、フェイルにつり合わぬアリファの美貌に対する眼差しであったことは、民衆の会話から把握出来た。


 むしろフェイルはつり合っていないと言われている事に憤慨さえしていた。アリファは満面の笑みを浮かべていたが。



 暫し道中を歩いた末、二人は一軒のボロ民家に辿りついた。

「どうして立ち止まるの? 急いで行きましょ」

「ここだよ」


 アリファは思わず目を丸くした。それもそのはず、フェイルの指した民家は屋根も所々に穴が開き、壁にも亀裂が入っていた。今にも崩れそうという形容が相応しいその家に人が住んでいる等誰が考えようか。


「あいつも親が早くに死んで貧乏暮らしだからな、しょうがないのさ」

 そう言ってフェイルは手馴れた様に、ノックもせずに鍵のかかっていないドアを開いた。アリファは驚きながらフェイルの後ろにくっついて家内へと入ると、真っ先に綿の飛び出たソファにだらしなく座っている男の姿が見えた。


 短髪だがボサボサの緑髪、藍色の丈が長いシーパンに緑の的模様がプリントされた黒いティーシャツ。清潔だとはとてもいえない不甲斐なき風貌。


「おぅ! フェイルか……って、誰だその超ウルトラメガトン級のベッピンは!?」

「話せば長くなるんだけどさ……」




 フェイルは先刻秘境で起こった事の全てを事細かにヨシアに話した。最初はまともに話を聞いていなかったヨシアも事の重大さを悟ると真剣に聞き入っていた。

 その様子を見てアリファはヨシアが芯のある人間だと理解する。


「なるほど……要するに、アリファはその身に世界に天災を与えかねない悪心を持っていて、お前はその悪心を葬りにアリファと一緒に向かう。だが危険が伴わないとも限らない旅だから俺にもついてきて欲しいと」

 フェイルはコクリと頷いた。


「なんかファンタジーちっくだな。それに黒い翼とか萌えすぎだろ!」

 ヨシアはアリファにローブを脱いでもらい、黒翼を見せてもらうと一層興奮したように叫んだ。


「やべえなおい! 格好良すぎだろ、痺れるぜこりゃ!」


 一見ぶっきらぼうな発言だが、この発言を通してアリファはヨシアに好感を持った。フェイルに続く二人目だ、悪心の話を聞いても、黒翼を見ても動揺しなかったのは。アリファはこの時、ヨシアとも距離を置く事なく共に旅が出来ると確信した。



「それでヨシア、俺達と一緒について来てくれるか?」

「いいぜ、困った時はお互い様だし、今回は世界も関わってるんだろ? それにこんなベッピンちゃん、この俺がサポートしてやらないわけにはいかないしな」


 ヨシアのその言葉を聞いて、フェイルとアリファは同時に笑みを浮かべた。頼もしい仲間が一人増えたと思うと、喜ばずにはいられない。


「ありがとな」

「おう、準備するから待ってろ」


 ヨシアは気伸びをすると、よし。と自分に一呼吸をおいて、準備を始めた。









信頼出来る仲間。大きな旅を目前に心、強し。

次回、ヨシアの実力如何に?


アリファリング No.6 Coming home

2010年02月16日 23:16

 

 民家へ向かう道中、フェイル達はスライムの群れに遭遇した。というより、スライム達の方がまるでフェイルとの遭遇を意図したかの様に現れたのだ。

 アリファは思わず足を一歩下げたが、フェイルはまるで動揺しておらず……というより溜め息を吐きながら一歩前へ出た。


「大丈夫、すぐ終わるから」


 そう言ってフェイルが剣を横に一振りすると、スライムの群れは真っ二つに切り裂かれ、形状を失った液体と化した。少々グロテスクなその光景にアリファがフェイルの後ろに隠れると、フェイルはにこりと笑ってアリファの肩に手をおいた。



「心配ないよ、こいつ等は形状記憶能力を持ってるから小一時間もすれば元に戻る。そのせいかこいつ等いつも事あらば俺にリベンジを仕掛けてくるんだよな。もう飽きちゃってさ」


 アリファはこの言葉にフェイルの優しさを感じ取った。飽きたのならば、元の形状に戻れない程に崩せばいい。だがそれをしないのはフェイルが無益な殺生を好まないから。そうアリファは捉えたのだ。

 アリファは微笑むと、その後の道中を今まで以上に軽快な足取りで向かった。



「見えてきた」

 その後も暫く道中を進むと、フェイルの民家が見えてきた。そこでようやくフェイルは自分が何を目的としていたかを思い出す。


「アーッ!? そういえば俺、薪を集める為に奥地に行ってたんだった」

「え!? じゃあ急いで戻らないと」

 フェイルは足踏みをしながらあたふたとしたが、冷静と取り戻すと苦笑いを浮かべた。


「でもこれからルディブリアムに行くんだから、もう関係無いか」

 アリファはそれを聞いてがくりと肩を落とした。民家の目の前でとんだ取り越し苦労だと言わんばかりに。フェイルはその様子を見て焦りながらも、玄関の戸を開いた。


「ごめんごめん、さっきのは忘れて。汚い家だけど遠慮せずに」

 そう言ってアリファを手招きした。アリファがやや遠慮気味に入ると、続いてフェイルも中へと入る。玄関の戸が閉まると同時に、薪集めと聞いて急ピッチで隠れたスタンプ達が安堵したように木々から出てきた。

 それは森林一の狩人から開放された瞬間の、モンスター達の束の間であった。



 一方、フェイル達は家内で早々と支度を始める。といってもアリファはやる事も無く、その場に座り込んでいた。

 フェイルは何やらタンスの中をガサガサとあさっている。もう使っていないであろう、少し湿気た服が飛び交う中、目的の物が見つかったのはフェイルはそれを掲げた。


「あった!」

 すぐさまフェイルはそれをアリファへと投げる。アリファは手をおどおどさせながらそれを取って見ると、その正体は大きな白ローブだった。


「街中をその黒翼で歩くわけにはいかないだろう? 普段はそれを着用しておくといいよ、防寒にもなるし」

「あ……ありがとう」


 アリファはその場でワンピースの上からローブを羽織った。大きなは綺麗に足まで隠れ、黒翼も見事に誤魔化せていた。


「生地がふかふか、気持ちいい」

「なんたって父さんが使っていたという上質なローブだからね。限定プレミア物だよ」

 それを聞いてアリファはローブの臭いを嗅いだ。男臭さが無い事を確認してホッとしているその様を見て、フェイルは苦笑を浮かべずにはいられなかった。


 続いてフェイルは同じくタンスの奥をあさり、お目当ての物を発見した。

「俺の必要なのはこの……アダムの宝剣専用ホルダーだ」


 フェイルはその場に剣を降ろすと、ホルダーに剣を刺し込んだ。剣に調節してボタンを閉める。そのままホルダーを肩から背中にかけて背負うと、違和感の無いように背負布の長さを調節した。

 自然とホルダーが背中にはりつき、機敏な動作にも揺れないのを確認すると、フェイルは「よし」と一言言って、ホルダーを背中に背負ったまま剣を抜いたり収めたりしてみた。

 それを何度もする内、フェイルは感慨深くなる。


「これがあれば街中でも安全に剣を持てるし、いざという時も瞬時に構えられる! くぅ、やっぱり最高だぜこのホルダー!」


 この後、はいはい良かったね。というアリファの冷めた反応が返ってきたのは、余りにもご愛嬌であった。









束の間の安息、だが旅立ちは眼前へ……。

次回、仲間現る。ヨシア見参。


アリファリング No.5 生きる意味に永遠を告げよ

2010年02月15日 22:50

 

 生きる意味。とは何だろうか?

 人は何故生きる? 楽しい時に満足感を覚えるから? 愛しい人を悲しませたくないから? 死という事に少なからずの恐怖感を持っているから?


 否。

 そこに千差万別の意味があれど、人は生きる事に意味等持たないのだ。意味は探求するものであり、人は生きている故、意味を欲しがる。生きるとは、ごく自然である事なのだ。


 当然。

 少女が考えもしなかった見解。ごく自然でいられない少女は生きる意味の無さを露呈する事で死を促した。が、フェイルは違った。少女に生きる意味を諭す事に心の温もりを分け与えたのだ。


 氷河期に晒された彼女の凍て付く心は、フェイルは熱き太陽の日差しのよって溶かされた。氷は水へと変わり、目を通じて雫となりて、一粒、一粒を止まらなく。彼女はその場でわんわんと泣いた。



「呪われた悪心の黒翼は俺が少しでも覆い隠すから、だからもう生きる意味を見失わないでくれ」

「……うん」



 少女から自害の念が消え去った。フェイルは彼女の涙を自分の体で懸命に受けた。ひしひしと悲しみが伝わってくる。これが天災を宿した少女の苦痛、世界の命運を分かつ少女の苦痛。

 余りに、重い。


 フェイルはその場に倒れそうになった。


 終始泣き続けてようやく涙が枯れた後、彼女は全ての負が抜けたように立っていた。なんと凛とした風貌。最初に見た時にも増して、背中の黒翼にも違和感を覚えない程、凛としている。

 フェイルはこの時にして、ようやく当然の事を尋ねた。


「君、名前は?」

「アリファ=ベルモンド。貴方の名前は?」

「フェイル=ディアン。英雄アラン=ディアンの血を継ぐ者だ。父さんのした偉業に比べるには小さすぎる事だけど、君の悪心を必ずや至災の間に葬る。それが俺の今を生きる意味だ」


 それを聞いたアリファと微笑むと同時に手を差し出した。

「よろしく」

 アリファの声を聞いて、フェイルも微笑むと同時を手を出した。握手。


 絆。



「それでさ、困った事があるんだけど。俺、ここから出る道がわからない」

「大丈夫よ、私は元々泉から生まれた存在。この秘境の構造は把握してるわ」


 フェイルが安心した様に腰を抜かすと、アリファは手を口元に添えながら小さく笑った。

 その後、フェイルはアリファの案内の下、複雑な道のりを抜けると最初に落ちた穴の下まで戻る事で出来た。ルディブリアムに向かう支度を済ませる為、取り敢えず二人はフェイルの民家へと向かう。









存在はごく自然に。生きているが故に生きたい。

次回、旅立ちへの準備。先ずは民家にて。

アリファリング No.4 Real

2010年02月15日 00:18



 フェイルは長く脳内で言葉を選びぬいた末、なんという事もない一言を懸命にこぼした。


「え?」

 単純すぎる返答。しかし、今のフェイルにはこれが精一杯でありこれ以上の返答があるのかともいえる。


「私が生きていても災厄しか招かないから。殺して」

「何で……そんな悲しい事を言うんだよ」


 フェイルは本心から言葉をもらした。しかし少女にその気持ちは届かなかったのが即答で言葉を返される。


「貴方間違ってない? 人は平気で虫を殺す、小動物を殺す、果てに家畜を殺す。それなのに人を殺せない。それっておかしいとは思わないの?」


 次の瞬間は少女の頬はフェイルの手の平によってはたかれた。少女は突然にことに動揺しつつも平静を装う。


「何を……」

「人が人に情を抱いて何が悪い! 簡単に殺せなんて言うな馬鹿野郎!」



 フェイルの心に迫る一言に思わず少女はほろりと涙を一粒零した。それをきっかけに少女は力を失ったようにその場に倒れ込む。


「私は人だけど人じゃないのよ……」

 フェイルが理解しきれないでいると、少女は言葉を続けた。



「私は人の持つ悪、嫌疑、不穏の心から生まれた人型の結晶。特に25年前に起こった大戦争は、一気に私の存在を加速させる事になった」

「悪心の結晶? そんな馬鹿な」


「この秘境は最果ての泉と呼ばれ、人の悪、嫌疑、不穏の集合地になるの。そしてそれが泉の限界を超えた時、人の結晶がその全てを内を込めて誕生する。それが私なの」


 余りに非現実、というより衝撃的事実。少女の言葉を疑うという選択肢は無かった。その潤んだ瞳が事の真実を表している。なんと悲痛なリアル。神はこんな悲しみを浅き少女に託すというのか。不平等極まりない。


「故に、私の中には悪、嫌疑、不穏が膨大に宿っている。いずれそれが暴発すれば世界には破滅の天災が訪れる……。その剣、アダムの王剣で結晶を砕かなければ問題は無かったけれど、私が命を受けた以上、また死ぬ事も義務」



 フェイルは、自らの剣がアダムの王剣という名を持っていたという事を知ると共に、少女の持つ奥深き定めにただ頭が上がらなかった。だが、納得等出来ない。フェイルの口から自然がもれる。


「それでも君は殺せない。その悪心をどうにかする方法は他にないのか?」

「ルディブリアム100階裏、至災の間にいけば悪心を時空の歪に葬ることが出来るけど……」


「あるじゃないか! その方法なら完璧だ、今からすぐにでも……」

「違う! そういう問題じゃないのよ。悪心の抜けた時、私に生きる意味はある? 価値はある? 危険分子でしかない私は死ぬのが一番なのよ……。だから、殺して」


 無音。何秒続いただろうか? 最初に響いたのは木々のざわめき。次に響いたのは地面の草々の揺らぎ。そしてフェイルの少女を抱きしめる音。不純等ではない。単に悲しき少女を抱きしめずにはいられなかった。

 少しでも温もりを分けてあげたくて。


「生きる意味なんていくらでもあるさ。少なくとも俺は今、君に生きて欲しい。それって十分な価値だと思わないか?」









意味や価値の前に、生を感じている。

次回、決断。絶望の先に何を選択(と)る?


アリファリング No.3 私を殺して

2010年02月14日 13:04



 遠目から見てもわかる。結晶の中に人が眠っている事が。

 フェイルは最初、その状況に対応できず、目を左に右にを回した。何かがあるというわけではない。何かをしておくことでこの状況の存在を誤魔化したかった。


 それは理解に耐え難い、というもので。ようやく冷静を取り戻すとフェイルは結晶のある泉の端目掛けて走った。


 
 フェイルは結晶の下に辿り着くと、真っ先に中に眠る人の様子を窺った。遠目からじゃわからなかった容姿、それを見てフェイルは眼球をギョロリとさせた。


「美しい」


 結晶の中に眠るはフェイルと同年代と見える少女。しかしその容姿は肩までかかったオレンジの美髪に今まで見た事もない様な美貌を持つ顔。そして透けそうな程透明色のワンピース。一言で形容しよう。

 完美。


 体制は普通に脱力した起立の様な姿勢である彼女を見てフェイルは思わずうっとりとした。



「綺麗すぎだろ……ダイヤモンドでも事足りない美しさだぞこれは。でも何でだろう?」

 完美の中に、一つの矛盾があった。それは黒き翼。彼女の背中には堕天使の如き大きな黒翼が生えていた。しかしそんな事はすぐに頭内から消え去り、フェイルの中に不純がはしった。足をかがめ下からワンピースの中を覗き込む。


「もう少し、もう少しで……って俺は何をやってるんだ!」

 ノリツッコミ。あと一歩の所でフェイルは自我を取り戻し留まった。単にフェイルがスケベというわけではなく、いち男としてそうまでさせてしまう程の魅力が彼女にはあった。



「何で結晶の中で眠ってるのかはわからないけど、これは助けないと」


 ファイルは近くに落ちていた、両手で抱えるサイズの石を見つけると、大きく振りかぶって結晶に叩きつけた。

 鈍重な音が響く……が、崩れたのは結晶ではなく石。無数の亀裂が入り粉々に砕け散った。


「どんだけ硬度高いんだよ!? ここに石より固い物なんて……」


 あった。

 フェイルは背中に担いでいた剣を手に取った。確かにこの剣の硬度は尋常じゃない、だがそれはあの結晶も同じ。


 剣が折れやしないだろうか?

 それがフェイルの不穏を刺激した。大切な父の形見が折れでもしたら。そう考えると気が滅入る。眠れる彼女だってよくよく考えれば他人じゃないか、リスクを冒してまで救う必要が……。



 フェイルはそこで思考を停止させ、自分を頬を根限りに殴った。フェイルはその場に倒れこむ。


「くだらない事を考えちまった。そんなんだからいつまでも父さんの背中しか追えないんだ」


 フェイルは立ち上がると、ゴクリと唾を飲んだ。剣を結晶向けて構える。


「俺はフェイル・ディアン。父さんの見なかったその先を見て行く男だ!!」


 フェイルが渾身の一振りを結晶に浴びせると、結晶は突如強力はヒカリを放ち、フェイルの視界を真っ白に染めた。フェイルは思わずその場でしりもちを着き、段々と見えてくる景色に意識を傾ける。



 視界が元に戻った時、目の前に立っていたのは、結晶の中に眠っていた完美たる少女だった。フェイルはビクともしていない剣を見てホッと一息ついた。


「よかった、剣にも異常は無いし、何より君を結晶の中から解放出来た」



「私を殺して」


 結晶の中から開放された少女は最初に放った、突如かつ全く予想出来ない言葉にフェイルは暫く言葉を発する事も出来ず、ただその場で目を丸くしていた。

 安穏、束の間、空白。


 何故?









勇気の先にあるは現実。刃の矛先は何処に?

次回、生きる意味と悲しき運命はリアル。


アリファリング No.2 Rainbow road

2010年02月14日 00:40



 ただ純心に続けた黙祷。フェイルはまぶたを開くと、何を発する事も無く静かに立ち上がり、壁に立て掛けられた剣を手に取った。

 その剣を深く寛大な心と共に握り締めると、フェイルはようやく声を発する。


「父さんが築き上げた時代、25年の安穏でようやく幸せを掴み始めた人々、何も起こらないように……俺は幸せだけを願うよ」


 フェイルは途端にパンと大きな拍手を鳴らすと、暗かった空気を一気に切り替えた。時代は繋がった、これからは自身が意識を持って生きていくべき時代だ。

 いつまでも暗く等なってはいられない。



「さて、薪が切れてたから収集してこよっと。普通の木からか、スタンプからか……どっちでもいいか」


 そう言ってフェイルは剣を背中に据えた。今は戦争の時代ではないが剣ぐらい担ぐ。それは未来へと繋ぐ自らの背負い物だ。それに剣があれば何かと便利である。今からの薪収集にだって剣は欠かせない。


 フェイルは大きな欠伸をすると、滲んだ涙を拭いながら家から出た。



「さてと、薪を効率よく収集する為にはちょっと奥地に入らないとな」


 フェイルは家の裏に回ると、そこから木々を掻き分け奥に入っていく。奥地程、悠々と育った大木がよく育つ。

 その上、フェイルの背負う剣はその形容にも関わらず斧と同様の使い方が出来るし、刃こぼれも起こさない。流石は英雄の手にした伝説の剣というところか。


 モンスター達はフェイルの存在を察知してその場を離れているのか中々出現しない。フェイルが仕方なしにズンズンと奥地に進んでいると、視界に虹色の何かが映った。



「何だ? 虹色の蝶?」


 それは世にも珍しき虹色の羽を持つ蝶だった。羽から舞い落とす粉にもその色素があるのか、その蝶が飛ぶ姿はまさしく虹の通り道。

 フェイルは迷う事なくその蝶に惹かれて追いかけた。少年時代の淀みなきあの頃を思い出すかの様に。



「虹色の蝶なんて激レアじゃないのか!? 少年心をくすぐられるぜ……ウワッ!?」


 虹色の蝶を無我夢中で追いかける最中、どこかもわからなくなった様な所でフェイルは突然足を取られた。元々穴であった場所が草地等に埋もれて隠れていたのだ。完全なる油断。

 しかも穴はただの穴ではないらしくフェイルは滑り台を滑るように穴のトンネルを滑っていった。


 中々な時間を滑っていると、突如穴は終わりを迎え、フェイルは到着地点にしりもちを着いた。



「イテテ、完全に不覚だった。虹色の蝶も見失ったし踏んだり蹴ったりだな……ん?」


 フェイルの心は一瞬にして前後撤回の心境に満ちた。穴の先にあったのは、ここはヘネシスかという程の樹木が生い茂り、複雑な日光の漏れ方からか全体が青緑に鈍く輝く景色。

 まさに自然の宝石箱と形容すべき神秘の空間。


「すごい……!?」


 フェイルは驚愕した。神秘の空間の中央にある透明色の甘美たる泉、その端の地に、深々としたアクリマリンの様な輝きを放つ大きな結晶をあった。だがフェイルが驚愕した理由はそこには無い。その理由は……。



「結晶の中に、人が眠っている!?」









時は新を迎え、急激に加速する。

次回、目覚めは何を生む?ヒカリかヤミか。


アリファリング No.1 Boys be ambitious

2010年02月13日 13:11

 
 
 物語は何時も、偶発的なのに運命的であり、ロマンに満ちている。

 此処はメイプルワールド、ビクトリアアイランドに位置する街、ヘネシス。緑が豊かで安穏としたこの街には民家の集合地帯があるが、そこからは少しばかり離れ、森林部に位置する民家が一つある。


 人里を離れたその民家には全体的に白を基調とした服装に艶やかな銀髪が特徴的な少年が住んでいた。
 
 スライムが緑の草地に擬態し、スタンプが木々の合間を通り行き、メイプルキノコがキノコに紛れて休息をとっている中、そこに住む少年は一人、家内で声をあげた。



「誕生日おめでとう!」


 次の瞬間は少年は手元に持っていた大量のクラッカーを同時に引いた。たちまちそれは大きな破裂音となり、外のモンスター達をも驚かせる。

 暫く空白の時間が続いた後、少年は寂しげに呟いた。


「せっかく18歳を迎えたのに、一人で誕生日を祝うなんてシラケだな。やっぱりヨシアを呼んでおけば……」


 18の誕生日を一人で祝った、いかにも寂しげな少年はそこで言葉を止めた。


「……駄目なんだよな、今日は父さんが死んで、3年になる日だから」



 少年が誕生日に誰も呼ばなかったのは、単に友達がいないというわけではない。少年の誕生日は共に父の命日であったのだ。故に父が死んでからの三年、少年の誕生日が賑わうことは許されなかった。


 少年はクラッカーをその場に投げ捨てると、部屋の壁に立て掛けられた剣の前に膝をついた。




 過去を遡り、25年前。まだ少年の父が少年と同じく18の頃、メイプルワールドは二極化し、大戦争を引き起こしていた。

 その二極とは、自由を求める自由派。支配を求める支配派であり、どちらもが確固たる信念を持って戦争に挑んでいた。


 が、その戦争を一気に加速させたのが少年の父、アラン=ディアンであった。

 アランは18にして天才と呼ぶに相応しき程の才能を発揮し、自由派として最前線に立っていた。その力は凄まじく、支配派は一気に衰退。後に支配派のリーダーを討ち取り、戦争に終結をもたらした。


 人々は自由を約束され、これ以上の血を流すことなかれ、と、この大戦争をメイプルワールド史上最大の過ち且つ、最高の結果として胸中に刻みつけた。




 そして25年を経た今、3年前にアランは病に倒れ亡くなったが、その血筋は少年に受け継がれている。


 今日を境に同じく18を迎えた英雄の息子。

 その名、フェイル=ディアン。


 フェイルはアランが大戦争に終結をもたらしたという伝説の剣にアランを感じ取り、今は亡きその姿に長き黙祷を捧げた。









脈打つ鼓動は誉れ、高々と。

次回、偶発的な出会いは運命を辿り。


プロット完成!

2010年02月10日 23:13

試行錯誤を重ねた末、ようやく脳内でのプロット完成しました!


タイトルは

アリファリング(仮)


そこ等辺とは一味違う本格物の王道メイプル小説としてやっていきたいです。

んまあ、詳しい事は連載開始まで密に、密に……。


大変だったんですよ、ありきたりなのしか思いつかなくて。授業中なんて四六時中呆けてましたから。無意識でノートを取りつつ、脳内で様々なプロットを構築!

なんて感じで (笑)


お陰で首筋は張るわ、ここ数日は授業全く聞いてないわで……。


まあ、とりあえずその間に思いついた短編小説が一つあるので、そちらを書いてからアリファリング(仮)の連載には突入しようと思います。


タイトルは 120円の温もり

管理人の十八番である、心理描写を用いた小説です。ヨロシク!



メイプル小説と名乗る以上、メイプル小説の存在は重要だろうと判断したので

アリファリングを書かせてもらいます。書く流れがあれば、120円の温もりも。




ネタ切れ

2010年02月07日 17:55

メイプル中毒の小説はあまり良い感じではなかったので、止めることにしました。


ただ、そうなるとメイプル小説を至急に始めなければならないわけですが

中々良いプロットが思いつかない…… (汗)


作詞家や小説家が内容で詰まるというのがよくわかる……。

あー、頑張って最高のプロット考えます。応援してー!!








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