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アリファリング No.4 Real

2010年02月15日 00:18



 フェイルは長く脳内で言葉を選びぬいた末、なんという事もない一言を懸命にこぼした。


「え?」

 単純すぎる返答。しかし、今のフェイルにはこれが精一杯でありこれ以上の返答があるのかともいえる。


「私が生きていても災厄しか招かないから。殺して」

「何で……そんな悲しい事を言うんだよ」


 フェイルは本心から言葉をもらした。しかし少女にその気持ちは届かなかったのが即答で言葉を返される。


「貴方間違ってない? 人は平気で虫を殺す、小動物を殺す、果てに家畜を殺す。それなのに人を殺せない。それっておかしいとは思わないの?」


 次の瞬間は少女の頬はフェイルの手の平によってはたかれた。少女は突然にことに動揺しつつも平静を装う。


「何を……」

「人が人に情を抱いて何が悪い! 簡単に殺せなんて言うな馬鹿野郎!」



 フェイルの心に迫る一言に思わず少女はほろりと涙を一粒零した。それをきっかけに少女は力を失ったようにその場に倒れ込む。


「私は人だけど人じゃないのよ……」

 フェイルが理解しきれないでいると、少女は言葉を続けた。



「私は人の持つ悪、嫌疑、不穏の心から生まれた人型の結晶。特に25年前に起こった大戦争は、一気に私の存在を加速させる事になった」

「悪心の結晶? そんな馬鹿な」


「この秘境は最果ての泉と呼ばれ、人の悪、嫌疑、不穏の集合地になるの。そしてそれが泉の限界を超えた時、人の結晶がその全てを内を込めて誕生する。それが私なの」


 余りに非現実、というより衝撃的事実。少女の言葉を疑うという選択肢は無かった。その潤んだ瞳が事の真実を表している。なんと悲痛なリアル。神はこんな悲しみを浅き少女に託すというのか。不平等極まりない。


「故に、私の中には悪、嫌疑、不穏が膨大に宿っている。いずれそれが暴発すれば世界には破滅の天災が訪れる……。その剣、アダムの王剣で結晶を砕かなければ問題は無かったけれど、私が命を受けた以上、また死ぬ事も義務」



 フェイルは、自らの剣がアダムの王剣という名を持っていたという事を知ると共に、少女の持つ奥深き定めにただ頭が上がらなかった。だが、納得等出来ない。フェイルの口から自然がもれる。


「それでも君は殺せない。その悪心をどうにかする方法は他にないのか?」

「ルディブリアム100階裏、至災の間にいけば悪心を時空の歪に葬ることが出来るけど……」


「あるじゃないか! その方法なら完璧だ、今からすぐにでも……」

「違う! そういう問題じゃないのよ。悪心の抜けた時、私に生きる意味はある? 価値はある? 危険分子でしかない私は死ぬのが一番なのよ……。だから、殺して」


 無音。何秒続いただろうか? 最初に響いたのは木々のざわめき。次に響いたのは地面の草々の揺らぎ。そしてフェイルの少女を抱きしめる音。不純等ではない。単に悲しき少女を抱きしめずにはいられなかった。

 少しでも温もりを分けてあげたくて。


「生きる意味なんていくらでもあるさ。少なくとも俺は今、君に生きて欲しい。それって十分な価値だと思わないか?」









意味や価値の前に、生を感じている。

次回、決断。絶望の先に何を選択(と)る?


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