--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アリファリング No.23 真実の母音

2010年03月15日 23:34



 フェイルが閉じた目を見開くと、そこには自分にヒールをかけるアリファの姿があった。
 思わずフェイルは飛び起き辺りを見回した。

「バルログは!? 倒したはずじゃ」
「馬鹿、何寝ぼけてやがんだ」

 すっとんきょうな様を見せるフェイルの隣でヨシアが呟いた。

「あれ、確かヨシアにヒールを……」
「あの後フェイル、気を失っちゃったんだよ。だからヨシアのヒールが終わった後、フェイルにヒールをかけてたの」

 そういう事か。とフェイルは息をついた。
 確かにフェイルは満身創痍を更に超える体力を使いきっていた。そのまま気絶するのも無理はない。


「にしても、あのナイスバディなターバン女は誰だ? 突如現れて助けてくれたらしいじゃないか」

 ヨシアは親指でマストに腰掛けるターバン女を指した。
 アリファもそれを疑問気にフェイルを見つめる。フェイルは暫く考えた後、答えた。

「わからない」
「あら、私がどうかしたの?」

 ターバン女はそれに気づいた様に、フェイル達に歩み寄った。
 ヨシアが「お前は誰だ」と問うと、ターバン女はくすりと笑った後、頭のターバンを取り始めた。

 ターバンがするすると解けていくと、胸程までの紫髪があらわになる。
 年はフェイル達より幾つか上だろうかといったところ。大人の美しさが彼女にはあった。
 ターバン女はその白いターバンをマフラーの様に首に巻くと、残りを使って髪を結える。
 紫髪は綺麗に結えられ、首からすらりと下げられた。



「何も名乗らずにご免なさい。私の名前はリツカ=イタチ。黄金の街ジパング出身の冒険家よ」

「そうだな、その胸だけは認めよう」
「何を認めるんだ!」

 フェイルの精彩あるチョップがヨシアに下された。天誅。
 アリファとリツカが残念かつ侮蔑的な目でヨシアを見ていると、ヨシアは前言を激しく撤回した。
 そんな事はさておき、フェイルがリツカに疑問をぶつける。


「聞きたい事があるんだけど、何故リツカはあのタイミングで戦闘に加わったんだ?」
「確かに私は戦闘の最初から上甲板の物陰に隠れていたわ。でも私があのタイミングで戦闘に加わったのは、じっくりと時を見定めていたから。敵は凶悪手配にも載るモンスター、バルログ。だから慎重に加わるタイミングを見計らったのよ」

「そうか。じゃあ何で俺達を助けようと思ったんだ?」
「助けようとか、そういうのとは全く別の概念で私は戦闘に加わった。単純に船を、乗客を、そして何より自分を護る為。あの場であなた達が戦っているのを見た時点で、そう決めたわ」


 場に絶妙な空気が流れる中、これまでの会話をヨシアが括った。

「まあ、リツカ=ボインの戦闘経緯はごく自然的な事だったってわけだな」
「そういうこと。けど私の名前はリツカ=イタチよ」

 ヨシアが巨乳好きだという事がわかったところで丁度、乗組員が上甲板上がってきた。
 相当な時間が経過しても船体に何も起こらないので、様子を見に上がってきたのだろう。
 余裕の表情で会話をしているフェイル達を見て乗組員が口をあんぐりとさせるのも無理はなかった。



「き、君達。確かこの船上に大型飛行ユニットのモンスターがいるはずなんだが……」
「それなら俺達が……フゴッ」

 真実を話そうとするフェイルをヨシアが口を塞いで止めた。
 口をフゴフゴとさせるフェイルに小声で意図を伝える。

「今ここで真実を話せば俺達はドンチャン騒ぎの的だ。俺達の目的はそんな事じゃないだろう?」
「た、確かに」
「リツカ=ボインが真実を話す事を望むなら、また別になってくるが」
「私もこの事は内緒で構わないわ。それとくどいけど、私の名前はリツカ=イタチよ」

 ヨシアは承諾を得ると、フェイルをアリファにパスして偽を述べた。


「よくわからないんですが、俺達が様子見にあがった時はもうモンスターはいませんでしたよ?」
「あれ……という事は無事船体から離れてくれたのかな? まさか……でも実際いないわけだし」

 乗組員は納得がいかない様だったが、暫く片手で頭を押さえて考えた後、事良ければ良しと目を見開いた。

「そうですか、それなら問題無いです。ありがとうございました」

 乗組員は景気よく敬礼すると、事は船内に伝える為、とりあえず船長室へと走っていった。
 フェイル達は安心すると、その場でしりもちをついた。

「とりあえず馬鹿騒ぎにはならずに済んだな」

 ヨシアが笑みを零し、青空を見つめる最中、アリファは隣にいるフェイルに小声で呟く。



「ねえねえ、聞きたい事があるんだけど」
「聞きたい事? 何?」
「ヨシアはリツカの事をボインボイン言ってるけど、私って胸ないのかな」

 突然、女の子ならざる質問がアリファから繰り出され、フェイルは戸惑った。
 どう答えればいいのか迷った末、素で自分が思っている心情を述べた。

「いや、アリファもボインだと思うけどな。ボインボインなんつって」

 やけに風を冷たく感じる二人だった。









男は大体、母音が好きです。

次回、リツカの存在は?


現在25位 目標トップ10 応援求む。

1クリックが世界を変える。

スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://no1really.blog122.fc2.com/tb.php/29-a3056402
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。