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アリファリング No.27 アリファリング

2010年03月24日 17:31



「いやあ!」

 アリファが強く突き放すと、フェイルはしりもちをついた。
 と同時に、我を取り戻したかの様に、フェイルは自分のしでかした事に錯乱する。

「う……ごめん!」

 右手で頭を押さえ込みながら、左手で振り向き様に立ち上がると、覚束ない足つきでフェイルは住宅街の奥に走って行く。
 訳も分からず戸惑いながらも、アリファはフェイルを追いかけた。
 フェイルは来るな、来るなと追いかけるアリファを顔で拒むが、足を絡ませその場で転倒した。
 それを見たアリファは慌ててフェイルに駆け寄るが、フェイルは具合を悪くし、壁に少量嘔吐する。


「だ、大丈夫!?」
「いきなり抱きしめたりして、ごめん」
「いいの、そんな事もういいから、落ち着いて」

 アリファはゆっくりとフェイルの背中を擦った。過呼吸になりかけたフェイルの気持ちを静める。
 フェイルが大分冷静を取り戻したのを確認して、アリファは緩やかな表情を浮かべた。


「私を住宅街の中に連れ込んでから少し変よ? どうしたの」

 フェイルは核心をつかれた様にはっとした。震える手でアリファの両手に触れる。

「怖いんだ……至災の間を目前に何かが起こったら。至災の間で悪心と共にアリファも葬られたらって」
 
 歯を震えさせながら、フェイルは縮こまっていた。
 大の男でも、失う事には臆する。それが大切であれば大切である程、同時に恐怖の対象にもなり得る。
 少なくとも今、フェイルの胸中は十中八九それが支配していた。
 そんな怯えたフェイルの手をアリファは今度、被せる様に自分の手で包み直した。


「大丈夫。私がフェイルと最初会った時、生きる事を臆した様に、フェイルは今、私が生きている事に臆しているだけ」
「それは違う、俺はアリファが死ぬ事に臆しているんだ」
「ううん。フェイルは私が生きている事に臆しているの。もし私が死んだら、フェイルは臆する事を忘れるでしょ?」

 その通りであった。
 確かにもしアリファが死ねば、フェイルは最早臆などしないだろう。ならば、死に対し臆しているとは言えない。
 紛れも無い真実。フェイルは、アリファが生きている事に臆していたのだ。

「心配しないで、私に生きる事を教えてくれたのはフェイル。だから今度はあなたに教えるわ。私が生きている事を」
「それは……」


 アリファはフェイルにプレゼントされた指輪を指から外すと、フェイルの手を優しく持ち上げた。
 リスでのあの時とは立場を逆転させ、今度はその指輪をフェイルにそっとはめた。

「どんな陳腐な物でも、それにこれ以上無い気持ちがこもっていれば、その物にはその人の心が宿る。なんでしょ」

 アリファは朗らかに笑むと、今度は自分からフェイルを抱きしめてやった。
 フェイルの嗅覚にほのかに心地よい甘い匂いが伝わる。
 触れ合う肌から感じる体温が止め処なくアリファが生きているという実感を与えてくれる。

「少しの間だけど、フェイルにそれを貸してあげるわ。だから感じて、私がいきているって事を」
「ありがとう」

 最果ての泉で出会ったあの時。まさか自分が救われるだなんて思ってもいなかった。
 今のフェイルにとって、最初から感じていたはずの答えが、確証を超した実感となって感じられる。
 今なら言える。今だからこそ言える。今しか無い。この気持ちを伝えるタイミングは。



「アリファ、俺は君の事が好きだ」

 それは余りに突然過ぎて、当然過ぎる一言だった。
 アリファもそれは船上でのヨシアの配慮によって気づいており、こんな時が来る事は既に感じていた。
 だが何故だろうか。未だに答えが出せていないのは。

 アリファは暫くの沈黙を保った。

 確かにある、フェイルに対する胸中の感情。
 これは愛なのだろうか? それとも、それ以下の感情なのだろうか?
 だが少なくとも、顔を赤らめ、心の臓を早々と打ち鳴らす今のアリファの芯には心たる答えが存在した。


「今は未だわからない。でも、至災の間に悪心を葬る事が出来たなら、その答えは必ずだすわ」

 見据えた確信。悪心を葬る果てにこの感情が熱く煮えたぎったならば、それは間違い無く愛なのだろう。
 答えの見えないアリファの返答だが、フェイルはそれに納得した。

「わかった。色々と着き合わせてごめんね。でも決心が着いたよ、至災の間に行く決心が」
「そう、それなら良かった。じゃあ行きましょ」

 二人の表情は何時に無く凛としていた。至災の間を控えるにして、万全たる信念を据えて。
 フェイルの指には、アリファから借りた指輪がしかと入っている。









不穏の末、辿り着いた信念。アリファリングは受け渡された。

次回、遂に至災の間へ突入。その先には何が?


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コメント

  1. のくにぴゆう | URL | -

    はじめまして、訪問をありがとうございます。

    プロの絵はGT0ですかなもし、挑戦的な雰囲気ですねぇ~

    応援ポチやりました!

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