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アリファリング No.29 Cogwheel of fate

2010年03月27日 18:38



 視覚を通して広がる至災の間にフェイル達は思わず息を呑んだ。
 エオス塔同様のブロックで包まれた外壁に、何やら特殊な紋様が隙間無く張り巡らされている。
 円状のその空間の奥に控えているのは、複雑な紋様の陣だった。
 この陣を通して悪心を葬るのだろう。フェイルは重苦しい空気をゆっくりと呑んだ。

 円状の空間の広さはせいぜい直径20から30メートル程度のものでそこまでの広さではない。
 フェイル達が陣の目の前まで到達するのはすぐの事だった。
 アリファが大きく息を吐き出す。幾度か深呼吸をした後、覚悟を決めた様に陣の中へ入ろうとしたその時だった。

「待てよ」

 背後からの声にフェイル達は一斉に後ろを振り向く。
 入った時点では見えなかった死角に20代前半から半ばと思われる男が壁に腰掛け佇んでいた。
 少しウェーブの掛かったなだらかな黒髪に鋭い眼光がフェイル達を何となく威圧している。
 即座に理解出来た。この男が敵だという事を。

「何で至災の間に入っていられたの!」

 最初に叫びをあげたのはアリファだった。
 確か言われてみればその通りである。特殊万物が必要不可欠なこの場所に何故入れたのか?
 皆が動揺する最中、男はウェーブを手でくしゃくしゃとし、とかし直すとぶっきらぼうに背中に手をやった。
 見えていなかったが、男の背中には剣が携えられていた。男はそれを引き抜き、見せつける。

 その剣はフェイルの持つアダムの王剣と瓜二つで、違いといえば柄のエンブレム程度だ。
 皆が頭を傾げる中、アリファだけは察したらしく、僅かに呼吸を乱していた。

「それは……イヴの妃剣」
「ご名答。これはそこの銀髪の持っているアダムの王剣の対剣、イヴの妃剣だ」
「銀髪じゃない、フェイル=ディアンだ。お前が此処に居られた理由はわかった。ならば、お前の目的は何だ」
「目的? 鈍い奴だな。俺の目的は他ならない、そこの女の悪心だ」

 男が眼光がより鋭くなるのを見て、フェイルは本能的に剣を構えた。
 続いてヨシアとリツカも身構える。が、男は両手をあげて攻撃の意思が無い事を示した。

「待てって、もう少し話と洒落込もうじゃないか」
「えらく余裕だな。じゃあ聞かせてもらうぞ、お前の名前は何だ。そして何故悪心の存在を知っている」

 後ろからヨシアが睨みを利かせた。
 男は溜め息をつくと、侮蔑するかの様な目でヨシアを見る。

「自分から名乗るのが礼儀だろう。リヴァン=ベールドールだ、お前等も名乗れ」
「さっきも名乗ったが、フェイル=ディアン」
「アリファ=ベルモンド」
「ヨシア=ロダン」
「リツカ=イタチ」

 リヴァンはフェイルを見て薄らかな嘲笑を浮かべた。
 その後でまたヨシアを見つめ直し、目を鋭くする。

「何故悪心の存在を知っているかを聞きたがっていたな。簡単な事だ。フェイルがアダムの王剣をアリファの結晶と共鳴させた時、俺の持つイヴの妃剣にも同様の現象が起こったからだ。そして共鳴を通じて俺は悪心の情報を得る事が出来た」
「そこまで密接に。何で接点を持たない俺とお前が持つ剣にそこまでの接点があるんだ」

 当然の見解としてフェイルは言葉を返した。
 が、リヴァンの反応は余りに嘲笑的で、口元は酷く歪んでいる。
 挑発的な笑みにフェイルが感情をあらわにしていると、リヴァンは口元をつぐみ、再度開いた。

「接点を持たない? お前は本当に無能なんだな。俺達の接点等、至極原点に存在している。そう、25年前の大戦争から」
「何だと?」
「当然の話だが、アダムの王剣を前代所持していたのは自由派のアラン=ディアン。そしてディアンの名を察するに、お前のアランの息子といった類だろう。だとしたら皮肉な話だ、イヴの妃剣の前代所持者を教えてやるよ」

 この時点でフェイルをはじめ、この場にいた誰もがその所持者を察せられた。
 同時にこの戦いが言わば宿命でもある事を理解する。
 25年前に起こった大戦争。それが新時代の流れで未だ繋がっている。
 リヴァンが次に口を開いた時、その思惑は確信へと変化した。

「支配派のリーダーを務めたジンガラム=ベールドール。俺の父親だ。俺の父親はアランにその命を討ち取られる前、母体の胎内に生命を宿した。それが俺という訳だ」
「大戦争の結末を作った対剣がこんな形で引き継がれ、皮肉な偶然を手繰り寄せるとは」
「偶然? 寝惚けるな、これは運命だ。大天使ミカエルの下、対剣が生み出されて以来、それを持つ二人は運命的な戦いを強いられてきた。対剣の片割れが刃を折らぬ限り、運命の歯車は回り続けるんだよ」

 余りに重々たる意味を持つリヴァンに発言に、フェイルは暫く言葉を失った。
 大天使ミカエル。この世界の誕生と共に存在していたという伝説の始祖。
 リヴァンの話通りになぞるならば、戦いは遥か昔から続けられたという事になる。
 そしてその新代が自分。フェイルは自分の持つ運命を胸に感じ込めた。

「そうか、そしてお前は亡き父親の為にも、悪心を利用して世界に支配をもたらそうって訳か」
「フェイル、お前は天才だな、的外しの。確かに俺はアリファから悪心を奪う。至災の間は万象を葬る事も出来るが、転送する事も可能。故にそれを俺に宿し変える事も出来るからな。だがそれを使って誰が世界を支配すると言った」

 リヴァンは両手大きく広げ空気を仰いだ。
 右手を大きく上に振り上げると、親指を下につき立て、振り下ろした。

「俺のこの世界に落胆している。自由も支配も、どちらも満足な結果を得られないこの世界に。ならばこの世界に出来る最善手は何か、俺は思いついたんだよ。破壊すればいいと」
「破壊すればいいだなんて、詭弁じゃないか!」
「詭弁かどうかはお前が決める事じゃない。そこで舞い込んできたのが悪心の話だ。天災の力を使えば世界の破壊等容易い」

 リヴァンは高笑いした。狂ったその思想にフェイルは目を細ませる。
 誰もが怒りに打ち震えるその最中、ヨシアだけは挑戦心を煮えたぎらせる様にフェイルの肩を叩いた。

「英雄の偉業らしくなってきたじゃないか。この世界破壊論を唱える馬鹿を倒して、さっさと悪心を葬ろうぜ」
「ヨシア……そうだな。表沙汰になる訳じゃないけど、こいつを倒して悪心を葬るのだって十分な偉業だ」
「そうだ。だから集中しろ、大切な奴を失わない様に」
「大切な奴か。そうだな、終わらせよう。こんな奴倒して、さっさとエピローグだ!」

 フェイルは剣をリヴァン目掛けて構えた。
 続いてヨシアとリツカも武器を構える。アリファは状況を察して壁際に身を引かせた。
 
 リヴァンは様子を伺いながら、足を後ろに進めて行く。次第に距離を置いていき、フェイル達から数メートル立ち退く。
 ふっと息を吐くと、その目は戦闘に向けてより一層殺戮的なものとなり、携えた剣と共に向けられた。
 絶妙な空気が双方の闘気を荒ぶる。









運命は狂々と廻り出す。世界を懸けて討て!

次回、刹那が招くは?


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