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曇天 下

2010年01月31日 23:11

 

 緊張で心臓が高鳴る。つい先刻まで苛立ちに満ちていた純の心境は一転、無に返った。

 呼吸がままならない。大きく息を吸っては小さく息を吐き、小さく息を吸っては大きく息を吐き。


 車体のエンジン音が嫌に大きく聞こえる。ドルンドルンと揺れる心を掻き立てる。

 純は我をしかと取り戻すと、途端に目の前を凝視した。あの子は、あの子はどうなった!?


 純の視界の先に映ったのは、目の前で急停止した車に腰を抜かしている少女の姿だった。イヤホンが片方抜けて音漏れしているが、そんな事等どうでもいいと言わんばかりに。


 幸い後ろからは車が来ていなかった為、難は逃れた。純が窓から顔を出し、少女の身を心配していると、少女は我を取り戻したのか立ち上がり、純を形相で睨みつけた。



「危ないじゃないのよ、人殺し!」


 そう言って少女は、もう青に変わった信号を渡って足早に去っていった。純はその状況がよく理解出来ずに暫く呆けた。その後でようやく状況を理解し、呆けを極度の苛立ちに変換させる。


「何が人殺しだ! 悪いのはそっちだろ!」


 純は根限りにハンドルを叩いた。寄せ、歯をギシギシと擦り鳴らす。

 その場でクラクションを鳴らし続けるなり、窓ごしにストレスをぶちまけるなりしようとも思ったが、この場でそれをするのはあまりに社会性から離れており、公共を乱す事にもなる為、懸命にこらえた。


 あの拍子において、純に非は無かった。あるとすれば前をよく見ていなかった程度。信号無視で渡った少女の方が明らかに非があるのは当然の話。なのに何だこの矛盾は。正しきと間違いの真実が歪んだこの世界。天地は何時か逆さになるとでもいうのか?



 信号がまた青に変わると、純は腑に落ちないまま車を再度発進させた。右足でアクセルを踏みながらも、左足でトントンと貧乏ゆすりを続ける。

 
 高校で習った荀子の性悪説が脳裏を過ぎる。人は皆欲望に満ちていると。

 まさにその通りだろう、上辺だけでは正しきの衣を纏って、本質を見てみれば欲望に飢えたモンスターだ。


 そして人は薄々とそれを知りながら生きている。悪に満ちた自らの存在に気づきながら。

 そう、佐東 純も悪なのだ。否定はしない。だから今も苛立っている。


 そんな中、ようやく純は煙草の存在を思い出した。煙草は急停止の際、地に落ち、もうもうと煙をあげながら灰を作り出していた。

 こんなに煙があがっているにも関わらず、それに気づかない始末。純の苛立ちはそこまで高まっており、それを収めるのに相当な時間を要したことを意味する。

 純が煙草取り上げると、火種の触れていた部分が少し焦げていた。純は煙草をグリグリと灰皿に押し付けると、ため息を一つ漏らした。



「疲れた」


 目の前には駐車場が見えていた。我が家であるボロアパートの目の前にある、無駄に高額な駐車場。

 そこに純は車を止めると、キーを手に取り、車内から出た。次にとった行動は大きな気伸び。その次に首の骨を鳴らし、指の骨を鳴らす。今日は突然のハプニングに心身共に疲弊しきってしまった。こういう日は早々と眠るに限る。


 純はアパートの自室目の前に立つと、先程のキーと共につけられた家の鍵を取り出す。大きな欠伸をした後に、自室に入ると、純は本日二度目、目を丸くする事になる。



「誕生日おめでとう!」


 クラッカーの音が響いた。部屋は綺麗に飾りつけがなされており、小さなテーブルにはところせましと大きなケーキが乗っていた。そんなドッキリを仕掛けてくれたのは、他でも無い。


 最愛、若子。


「あ……」


 純は突然の事に戸惑いを見せた。忘れていたのだ、自分の誕生日を。

 世知辛い社会。天地と地もわからぬ、曇天に満ちたこの世界の中で純は何もかもを忘れていた。本当に大切な、自分の幸福を。


 幸せを数えてごらん、それが幸せだから。


 下らないマイナス思考に溺れ、堕ちていた。天と地の違いさえわからぬフリをして、見える曇天を誤魔化していた。世界はこんなにも真っ直ぐだというのに、始点と終点を繋ぐ中点は、こんなにも真っ直ぐだというのに。



「ありがとう」


 曇天の狭間から、日差しが照りだした。










・作品内容

社会のドロドロとした感じを表現したくて書いた短編ッス。

後は情景描写、心理描写の訓練の為。

管理人は甘ちゃんなので、結局曖昧な世界しか表現出来ませんでしたが (爆)

もっとね、こんなくだらない世界を面白いと言えるような、幸せを見つけて欲しいんですよね、そして照準定めたら、ビックリするぐらい真っ直ぐ進めるんで。楽しいよ、人生って。そう言える自分がいるからこそ、そういう事を教えたくて。

まあ、下手糞だから上手く伝えられないけど (笑)


・書き終えて

上、中に比べて下が長いなコレ!? (笑)

要約しきれかっただけです、すいま千円。

前半ノリノリすぎて後半は燃料切れ。最後のとことかもっと綺麗に心理描写を書きたかった。まあそこはまだ実力不足ということで精進、精進。

結局はね、曇天ボーイ&ガールに語りたかったわけですよ、下らないプライドで自分の幸せ捨てんなって。

管理人は少なくとも部活で道真っ直ぐ進めてるからさ、就職安泰じゃないけど、それって将来安泰っては言えるじゃん!? (汗)




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コメント

  1. 篁 | URL | -

    初めまして

    初めまして。篁(たかむら)と申します。
    この度は僕のブログにご訪問いただき、ありがとうございました。

    「曇典」拝読させていただきました。
    大人になることに、社会の歯車になることに、強く反発していながらも、気がつけば社会人。
    無力感も感じます。
    社会は白か黒かではなく、灰色でも通用してしまう。
    どうしても屈折したものの見方をしてしまいがちです。
    でも、愛する者がいる。
    これはとても大切なこと。
    その存在があるが故に自身も存在できるのだ、という感覚を大切にしたいですね。

    僕はしがないサラリーマンですが、作家になりたいという夢を捨てきれず、試行錯誤しています。
    もし、気に入っていただけたのでしたら、またいらしてくださいね。
    コメントとかもしていただけると大変嬉しいです。
    今後ともよろしくお願いします。

  2. りぼ | URL | -

    此方こそ訪問ありがとうございました。
    篁さんのブログはよく参考にさせて貰っています。

    曇天に拝読ありがとうございます。
    心に何か届くものがあれば幸いです。

    自分は部活動バリバリ派の高校生なわけですが
    最初はクラス内のふざけで始めた小説が、今では趣味の第一線となっています。

    人生の展開なんて変化球みたいなもので
    だからこそ夢を捨てれないですよね。
    作家志望の夢、応援しています。今度暇があればコメントしますね。

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