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アリファリング No.30 忠告しておく

2010年04月06日 17:00

「忠告しておく、油断するな」
 リヴァンは剣先をフェイル達の喉下に合わせた。
 未だかつて感じた事が無い程の鈍重な殺気がフェイル達の本能を刺激する。
 この局面で場の展開は停止した。膠着状態が続く。
 フェイル達が攻め入る機を幾度伺った事だろうか。見当たらない故、攻め入れない。
 慎重に時を浪費していく。ヨシアの額を汗がつ伝ったがヨシアはそれを微動だにしない。
 もし此処で目を右上にちらつかせればリヴァンは途端に迫り来るだろう。
 それとない仕草さえ出来ない、呼吸が嫌に苦しく感じる。
 フェイルは溜まった唾を飲み込んだ。

「油断するなと、言ったはずだ」
 瞬き等という次元ではない、視覚が機能しない程の高速。
 喉下に突きつけられた剣を反応で防ごうとしたフェイルだったが
 リヴァンはすかさず対象を腹部に切り替え、フェイルの腹部を切り裂いた。
 フェイルは口をおぼろげに動かしながら、倒れていく。
 何か言いたそうなその表情は、事が刹那だったという事を示し
 地に伏したフェイルの腹部からは血液が無残にも流れ出していた。
 誰も目から見ても、フェイルが戦闘続行不可能な事等、明白であった。

 ヨシアは腕を下ろし、事が信じられない様を晒す。
 リヴァンにとってこれは完全に好機であったが、ただ笑みを浮かべるだけだった。
 これが余裕なのかと悟りながら、リツカは腕を絶えず下ろさない様に気がけた。
 この局面では無いだろうが、ヨシアが狙われた場合、これで即座な追撃が出来る。
 だが、一番冷静を保てていないのはアリファだった。
「嫌あああああああああ!」
 柄にもない様な悲痛な叫びをあげると、身を縮こまらせる。
 心臓の鼓動が乱雑になり、我狂った様に呼吸を荒げると、それに黒翼が反応しだした。
 アリファの鼓動に合わせ、黒翼が本当に僅かずつではあるが成長している。
 アリファは頭を抱え込むと、黒翼で我が身を包み込んだ。
 それはまるで怪物の卵の様で、今までのアリファには無かった何かが確かにあった。

「大丈夫か!」
 ヨシアがアリファに駆け寄る。しかしその最中、リヴァンが剣を突きつけヨシアを止める。
 ヨシアは銃を振り上げたが、狙いを定める前に剣を胸元に添えられた。
「今お前を倒す事は容易いが、俺をもっと楽しませろ」
「楽しみたいなら俺を止めるな!」
「そう激情するな。今アリファの中では怒り、憎悪の悪心が芽生え、それが黒翼を成長させている」
「なら尚更止めねえと」
「魔女は子供を太らせてから食らう。常套手段だと思わないか?」
「お前、最初からそれを狙ってフェイルを」
「それは違う、偶然だ。しかし悪心女が人間、しかもこんな雑魚に好意を抱くとは笑止」
「俺の仲間をなめんなよ!」
 ヨシアが頭に血管を浮かび上がらせながら、銃弾を放った。
 しかしリヴァンはこれをなんなく回避し、距離を取る。

「二度目だ、そう激情するな。死に急ぎたいのか」
「死ぬのはてめえだ!」
「落ち着きなさい!」
 リツカが叫ぶと、ヨシアはようやく冷静を取り戻した。
 激情が収まる事で場が静かになり、自分がどれだけ喚いていたのかが理解出来た。
 ヨシアは深呼吸すると、リヴァンを慎重な目で見る。リヴァンは相変わらずの余裕を示していた。
「女ァ、良い判断だ。それに免じて作戦を練らせてやる。精々俺を楽しませろ」
「それはありがとう、有効に使わせて貰うわ」
 リヴァンは不意打ち等しないという事を、剣を突き下ろして示した。
 それを確認し、リツカはヨシアに近寄る。リヴァンには聞こえない様に小声で語りかける。
「作戦を練りましょ」
「練るったって、即席で作戦なんか作れるかよ」
「深く考える必要はないわよ。私達はこの時点で既に好機を得ている」
「好機?」
「そう、この局面では不意打ちが出来る」
「お前中々ずる賢いな」
「勝てばいいのよ。恐らくリヴァンは私達が慎重に作戦を練ると考えているわ、だからその裏をついて即座に不意打ちを仕掛けるの。私の加速技、アサルターでリヴァンに一撃加えた後、貴方の加勢も加えて一気に攻め込むわよ」
「わかった」
「いくわよ、アサルター!」
 リツカはその場で瞬時に反転すると、速度を加速させ攻撃を仕掛ける。
 突如の不意打ちで反応し損ねたリヴァンは下ろした剣を上げれない。
 リツカの短剣は意図も容易く、リヴァンの胸部目掛けて突き出された。

「不意打ちか、面白い作戦だがその速度じゃ俺は打てない」
 リヴァンは、リツカの短剣を左手で巧みに捕らえていた。
 空いた右手で剣を振り上げると、リツカの脳天に照準を合わせる。
 武器を放す事は戦闘の放棄に等しいが、命には已む無しとリツカが手を弛めようとしたその時
 リツカによって隠れた死角から距離を詰めていたヨシアが姿を現す。
「紅きにウェルダンの灼熱を。決断に刻め。トリプルファイア!」
 燃ゆるが如く放たれた三連の弾丸がリヴァンに迫る。
 リヴァンは他に手段を選べず剣を突き出すが
 詠唱による速度増加と近距離発砲が重なり、一発が頬をかすめた。
 更にその隙を見て、リツカはリヴァンの喉下目掛け、短剣を振り上げる。
 これも体制が整わず、状態をずらしたが逆の頬にかすめた。
 分が悪くなったリヴァンは剣を振り、リツカに距離を取らせた。
 ヨシアは銃を構え続けていたが、隙が無くなったのを見て、体制を整える。
「詠唱攻撃で間に合うかどうかは賭けだったが、それでも頬をかすめただけか」
「そこから更に間髪入れずに追撃したのに、それもまた逆の頬をかすめただけ」
「だけ? 調子に乗るな、かすめただけでも賞賛だ。もう好機はやらんぞ」



フェイルを事欠くも、激戦必死。
膨らむアリファの悪心は止まらない。

応援宜しくお願いします。
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