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アリファリング No.34 最も愛した者として

2010年04月29日 22:06

 リヴァンは激痛に喚くが、虚ろになる意識を堪えながら剣で我が身を支えた。
 短く、かつ激しく呼吸を漏らすと、憎悪に満ちた眼光をフェイルに向けた。
「信念だと……勝利とは、強者を裏切らぬ現実だ」
「それは違うな。勝利とは、渇望の現れだ」
 フェイルは上を向いて、呼吸を確保しながら異論を唱える。
 言葉を選びきれぬリヴァンに、更に言葉を浴びせる。
「この結果がその証明だ。誰よりも勝ちたいと思った奴がくくる信念は、生半可には破れないよ」
 反論に転じれぬ結果論をぶつけられたリヴァンは、目を煮えたぎらせながら歯を軋ませた。
 約束されていたはず勝利が、信念という根性論によってうち破られる。
 こんなにも強さとは脆く、天地を翻すものなのかと、言葉にならぬ喚き、呻きをあげ、苛立ちを吐き出していく。
 全てを吐き出しきった時、リヴァンにただ残っていたのは、勝利に対する渇望、ただそれのみだった。

「かくなるうえは!」
 リヴァンは足元をゆるりとふらつかせると途端、アリファに駆け走る。
 フェイル達は思わず叫んだが足が出ない。油断と共に、肉体疲労も相当に達していたのだ。
 言うならば、これもまた信念なのだろう。手段を選ばぬ執念という形の信念。
 しかし、アリファに近づいたリヴァン、アリファの状態を見たフェイル達は共に驚嘆を隠せなかった。
 アリファの黒翼が、常時の倍以上に膨れ上がっていたのだ。
 リヴァンもここまでの膨張は予測の範囲外だったのだろうが、一番に目を丸めたのはフェイルだった。
「何だよあれ、何でアリファはあんなことになってるんだ」
 フェイルがその要因を知る由はなかった。
 黒翼暴走の原因はフェイル自身が倒れたことにあるのであって、
 倒れたフェイルは暴走を見ることを出来なかったからだ。
 ヨシアはそれを見て、目を、口を重くしながら唾を飲み込むに息を吸い
「アリファの黒翼が暴走したのは、お前が倒れたことで悪心が膨張したからだ」
 現実を伝えた。

 フェイルは動揺をあらわにした。口をわなつかせる。
 自分のせいでアリファに確かな異常が現れている。それは逃れない現実。
「おいお前、今の立場わかってるのか?」 
 しかしそれに浸る間さえ与えない様に、リヴァンは黒翼に包まれたアリファめがけ剣を構えた。
「やめろ!」
「こいつを殺られたくなければ、自害しろ」
 悲痛にも叫ぶフェイルに対し、リヴァンは無情な視線をフェイルの剣に向けた。
 それはその剣で自らの命を絶てということを示し、絶対的に皮肉と呼べる表情をリヴァンはあらわにした。
 しかしそれには確かに発言力が存在し、動揺をした直後のフェイルにとっては憔悴の要因となる。
「自害……」
「そうだ、自害だ自害。早くしろ」
 リヴァンが剣先を黒翼に添え、フェイルをせかせると、フェイルは手段を失い、剣先を自らに向けた。
 しかし、自害しようとするフェイルを、ヨシアは殴り飛ばし止める。
 フェイルは敵意を持った眼差しをヨシアに向けると叫ぶ。
「邪魔をするな! これは俺の責任なんだ」
「それが本当に正しい選択なのかよ!」
「ああそうだ、だから止めるな」
「ふざけないでよ! そんな選択を誰が望んでるっていうの!」
 腹から、喉から叫ぶリツカの訴えによって、フェイルはようやく自分が保つべき冷静を取り戻した。
 自害したところで誰がそれを立派だったというのか、否、誰も言うわけなどなし。
 選ぶべきは、この危機的状況から、如何にしてアリファを救出するか。
 フェイルがそう考えを纏めたその時だった。

「私に刃を向けるノハ誰?」
「なに?」
 アリファの黒翼が開くと、リヴァンはイヴの妃剣もろともアリファの中に呑みこまれた。
 黒翼ががっちりと閉じ、また球状になると、骨の砕ける様な鈍い音が球内に篭る様に響く。
 黒翼が再度開くと、そこには見るも無残な、全身の骨が砕かれたリヴァンの姿があった。
 ぬけがらの様にアリファから滑り落ちたリヴァンは、生きてはいないことが容易くわかった。
 イヴの妃剣を手にしたアリファは目を開く。
 しかしその目はいつもの様に明るく澄んでおらず、黒く淀みきっていた。
「アリファ?」
 半ば放心気味に呟くフェイルに、アリファは自然なながれで言葉を返す。
「そうよ、私はアリファ=ベルモンド。ただし、悪心の方のね」
 しかしその口元からは、何かしら侮蔑の様なものが感じ取られ、
 アリファは最早アリファでなくなったということを示していた。
「これは想定出来なかった。悪心の暴走なんて。でも、最悪のパターンだな」
 ヨシアは銃を構えた。しかしフェイルはそれを制すと、自分が剣を構えた。
「元はと言えば、俺からの始まりだ。けじめも俺につけさせてくれ」
「お前、本当にアリファを殺れるのか」
 ヨシアがもった不安はヨシアにアリファが殺せるのか、ということだった。
 リツカも同様の疑問を抱いた様を示している。一瞬、戸惑うフェイルだったが、それは本当に一瞬であった。
 敵になるとは想定していなかったが、もしもアリファが死んだ時を、
 フェイルは旅の初日、ヨシアと話し、けじめをつけていたからだ。
 肩入れはしていた。アリファのことは好きだった。だが、敵になった以上倒すのみ。
 非情だがシンプルな理論に対し、フェイルは決断を下していた。
「アリファ、お前が道を踏み外したのなら、その顛末へ導いてやるのも俺の役目だ。最も愛した者として」
「同情? 友情? 愛情? 戯け」
 しかと剣先を向けるフェイルに対し、アリファも剣を構える。
 粗く言えばタイマン。世界はそれに託された。



更新に間が開いてすいませんでした。悪い癖が(汗)。
佳境なので頑張って更新します!

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