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アリファリング No.35 二度目

2010年04月30日 14:56

 フェイルはヨシアに視線を向けると、端に寄るよう目で指示した。
 ヨシアにはフェイルがどれ程の決意を持って、アリファと死闘を行おうとしているのか等、
 しる由もなかったが、ここまで来れば信用するかしないか故、ヨシアはリツカを連れて端へと身を引いた。
 壁によりかかり、体制をゆるめると、世界の顛末が下るこの闘いに見入る。

 こと仕掛けたのはフェイルだった。飛び込み、剣先でアリファの喉下を突きにかかる。
 アリファはそれを不体勢のままはじくと、体勢を立て直し距離を取り直した。
「体との連結がまだ鈍イ」
「フェイル、アリファはまだ悪心と完全に連結出来ていない。攻めるなら今だ!」
 ヨシアが一気呵成に、と叫ぶが、フェイルにその声は届いていないようだった。
 交える剣から、その者の気持ちが伝わるように、フェイルにもその現象が起きている。
「何もないんだ」
「何を言ってるの? フェイル」
「何もないんだよ」
 割り込みに入るリツカさえ無視し、フェイルは伝わった気持ちに酷く同調している。
 感情に重なるように身を委ね、口をあんぐりとさせた。
「何もないんだよ、気持ちが。ぽっかりと開いた穴のように、寂しい、寂しいって」
「何もいらない。喜び、怒り、哀れ、楽し、何もいらナイ。ただ悪に」
 助長するように呟くアリファに、フェイルは目を見開き、毛立つ。
「純粋に悪。何も求めていないんだよ、何も!」
 完全に冷静さを失っていた。
 これまでの本能を、目的を持って挑んできた悪とは全く異なる、悪故の悪。
 味方と呼ぶにも相応しくなく、敵と呼ぶにも相応しくないその存在に、フェイルは戸惑った。
 その隙を見て、アリファが目をギラつかせ、駆け、距離を縮めると剣を振るう。
 殺気を感じたフェイルがその剣を避けると、剣は地面に突き刺さる。
 驚くべきは刺さった剣が容易に抜けない程まで深くめり込んでいることだった。
「何ていう力だよ。体と完全に連結されたらこんな奴止められねえぞ、フェイル、今殺るんだ!」
 剣が抜けずに、焦るアリファの表情がフェイルの瞳に映し出された。
 決意は最初からしていた。後はそれを実行するだけ、世界の安穏はすぐそこに。

  ◇

「アリファには余り肩入れしすぎるな。それがお前の為であり、アリファの為だ」
「それでも俺はアリファを護りたい。俺はアリファが好きだから」
 旅立ちの前夜、あの日決意は出来たはずだった。
 護るということは時として、対立するということ。正すこともまた、護ることだと。
 だからこそフェイルはあの時、そう言った。自分にはそれが出来るという自信があったからだ。
 好きだからこそ対立出来る。それこそが本当の愛だと、上辺の空論に身を委ねて。

「おやすみ」
 寝たふりをしながら、ヨシアが眠るのを待ってから、立ち上がり、
 アリファの隣に立つと、フェイルしゃがみ込み、熟睡するアリファの顔を小一時間眺めていた。
 リスへ向かうあの夜にあった安穏な休息。飽きることなくフェイルがアリファの寝顔を見つめていると、
 アリファは気持ち良さそうに頬を和らげながら、寝言を呟く。
「フェイル」
 フェイルは驚いたように竦んだが、それが寝言だったと察すると、ほっと息をついた。
 しかし同時に、自分の名前を呼んでくれたことに対する喜びにも満たされていた。
 寝ていても自分を頭の片隅に置いてくれている。
 この時だった。フェイルがアリファのことを今まで以上に心から愛したのは。

  ◇

「何でだろうなあ」
 フェイルは剣を振り被ると、そこでぴたりと静止した。
「今はどんな錘を着けられても動ける気がするのに、心の錘が重すぎるんだ」
「馬鹿野郎!」
 ヨシアは怒号をあげたが、それと同時にアリファの剣は地面から抜け、アリファは剣を振り被る。
 ヨシアもリツカも、声にならない叫びをあげるが、フェイルは微動だにしない。
「皆ごめん、俺やっぱり英雄にはなれなかった。世界よりも何よりも、アリファのことが大切だから」
 躊躇いもなく振るわれる剣を、フェイルは何の恐れもなく迎え入れる。
 しかし、剣先は途中から方向を変え、その脾腹を貫いたのはアリファ自身だった。
「何ダ……と」
 これはアリファ自身、意識してはいないらしく、途中から自らに矛先を変えた自身が一番驚いていた。
 フェイル達も状況を把握出来ずにいると、急にアリファが頭を押さえ込み、悲鳴をあげる。
 悲鳴が数秒を静止したかと思うと、今度はよろめきながら立ち上がった。
 貫いた腹部から大量の血を流しながら、フェイルと目を合わせる。
 この時フェイルはようやく気づいた。アリファの目が元のように澄んでいることに。
「貴方と初めて出会った時とは、180度状況も意味も違うけど」
「アリファ、お前まさか」
「私を殺して」



二度目の私を殺して。同じ言葉であれど、意味は180度異なる。

二日連続更新っすよ。本当にこというと、先日捻挫してしまいまして、
今日朝から病院に行ったんですが、学校がスポーツテストだったので、
一日見学から逃れる為に学校サボりました。
いち学生として不健全ですいません。フリーなんです、今日フリーなんです(涙)。

応援よろしくお願いします。
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