--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アリファリング No.36 愛してる

2010年05月02日 18:51

 私を殺して。そう最初に言われたのは、最果ての泉で出会った時だった。
 ただ、あの時とは違う感情がフェイルの脳裏を伝う。
 
 最初に殺してと言われた時、アリファはフェイルを間違ってないかと言った。
 虫を容易く足で潰し、面白半分で小動物をなぶり殺しにし、果てに育てた家畜を平然と喰らう。
 それなのに人は殺せないとは如何たることか、と。
 それに対しフェイルは、人が人に情を抱いて何が悪いと反論した。
 そして口論は加速し、それに終止符をうったのは、フェイルの
「生きる意味なんていくらでもあるさ」
 という言葉である。

「嫌だ、殺したくない」
 感情に従ったフェイルだったが、その言葉にはあまりに発言力はなく、だらしなく至災の間をこだました。
「私はもうもたないわ。完全に悪心に支配される前に早く」
「それでも嫌だ! 俺は、お前を……お前を失いたくないんだよ」
 目元に涙を溜めながら、フェイルは剣先を下げた。
 時間がない中、決意の定まらぬフェイルに激情することもなく、アリファはそっとなだめ続ける。
「対剣が、アダムとイヴの剣が常に争いを作るから、こんなにも悲しみが起こるのよね。だから、私が自らと共に、この対剣を時空に葬れば、こんな争いはもう起こらないわ。お願い、私を殺しテ」
 アリファの目が黒ずみ始めているのがわかった。また悪心が支配し始めているのだろう。
 こうなっては最早、アリファと悪心は共有状態にあり、悪心だけを葬るということは叶わない。
 もうアリファを救う選択肢はないのだ。ただ、世界を救うか救わないかの選択肢しか。
 フェイルには決意するか、しないかしか残されてはいなかった。

 リツカがそれを酷に見守る中、ヨシアはフェイルの背中を押すように叫んだ。
「フェイル、これが世界の性なんだ。アリファの為にも、アリファを殺せ!」
 フェイルは口の中に溜まっていた唾を飲み込むと、剣先をあげた。決意に歪みはない。
「アリファ=ベルモンド。俺はお前のことが、大好きだ」
 アリファの腹部に刺さったイヴの妃剣のすぐ隣に、アダムの王剣は並ぶように突き刺された。
 その瞬間、フェイルが堪えきれずに涙をこぼしこぼしに流すと、
 アリファはそっとフェイルの体を抱きしめた。
 シースルーの服を越えて、フェイルの肌にアリファの温もりが伝う。
「フェイル=ディアン。私も貴方のことが、大好きよ」
 アリファの目からも大粒の涙がこぼれていた。
 ヨシアとリツカが、それを忍びなくも、少しでも目に焼き付けようとしている中、
 あまりに時間がないアリファは泣き崩れるフェイルを背に、陣の上に立つ。

「至災の間よ、我を時空の歪に葬り給え」
 アリファがそう言うと、陣が光を放ち、アリファの体を発光させ始めた。
「ありがとう皆、私に楽しむことを教えてくれて。ありがとう皆、私を喜ぶことを教えてくれて」
 ヨシアとリツカが涙をこぼすのは、人間としてごく当然のことであった。
 少なかったが、日々を共にした仲間が今、時空の歪に葬られようとしている。
 大切を人を失う以上に、悲しいことがあるのだろうか。
「ありがとうフェイル、私に愛することを教えてくれて」
「アリファ!」
 フェイルは、止まらない涙を拭い続けながら、アリファを見続けた。
 今からアリファが居なくなる。もう二度と会えなくなる。
 考えてはいけないと何度思っても、そんな感情が脳裏を過ぎり、涙腺を刺激する。
 止めたいはずの涙なのに、意思に反してちっとも止まってくれやしない。
 息を荒げ、鼻をすするフェイルに、アリファは涙を流しながらも、笑顔を見せた。

「愛してる」
 アリファが微笑みながらそう言った刹那、陣から強烈な光が放たれ、フェイル達の視界は真っ白になった。
 光が収まり、目が慣れ始めた頃にはアリファの姿はなかった。陣によって、時空の歪に葬られたのだ。
 フェイル=ディアン、ヨシア=ロダン、リツカ=イタチの三人は、
 アリファ=ベルモンドが確かに存在していたということを生涯忘れないよう、記憶に深々と刻み込んだ。

 最初に息をついたのはヨシアだった。そこから一気に皆が崩れる。
 ヨシアは仰向けに倒れこみ、リツカは横向きに流れるように倒れ、フェイルはうつ伏せの体勢で泣き入った。
 消えてしまった今でも、アリファの存在感はフェイル達の中にしっかりと宿っており、
 いくらもう居ないと頭に言い聞かせても、振り向けばアリファが居る気がしてならなかった。
 フェイルは現実を受け止めたがらない自分と葛藤していると、ふとした拍子に何と関係もなく外が気になった。
 塔の中じゃわからないが、今は晴れているのだろうか。
 入った時は確かに晴れていたが、今もまだ晴れているとは言い切れない。
 ただ、外に出た時晴れていれば、少しはこの旅も報われた気がする。
 そんな緩んだ感情が、もう旅は終わったのだと告げているようで、フェイルの心は僅かばかり安らいだ。



まだ終わりじゃないですよ、次が最終話です。
というか、私が感傷モードへ突入しようとしている(汗)。
誰が見てるのかもわからない誰得小説ですが、続けてよかった!うん!

応援よろしくお願いします。
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://no1really.blog122.fc2.com/tb.php/47-6e76c230
    この記事へのトラックバック



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。