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アリファリング No.3 私を殺して

2010年02月14日 13:04



 遠目から見てもわかる。結晶の中に人が眠っている事が。

 フェイルは最初、その状況に対応できず、目を左に右にを回した。何かがあるというわけではない。何かをしておくことでこの状況の存在を誤魔化したかった。


 それは理解に耐え難い、というもので。ようやく冷静を取り戻すとフェイルは結晶のある泉の端目掛けて走った。


 
 フェイルは結晶の下に辿り着くと、真っ先に中に眠る人の様子を窺った。遠目からじゃわからなかった容姿、それを見てフェイルは眼球をギョロリとさせた。


「美しい」


 結晶の中に眠るはフェイルと同年代と見える少女。しかしその容姿は肩までかかったオレンジの美髪に今まで見た事もない様な美貌を持つ顔。そして透けそうな程透明色のワンピース。一言で形容しよう。

 完美。


 体制は普通に脱力した起立の様な姿勢である彼女を見てフェイルは思わずうっとりとした。



「綺麗すぎだろ……ダイヤモンドでも事足りない美しさだぞこれは。でも何でだろう?」

 完美の中に、一つの矛盾があった。それは黒き翼。彼女の背中には堕天使の如き大きな黒翼が生えていた。しかしそんな事はすぐに頭内から消え去り、フェイルの中に不純がはしった。足をかがめ下からワンピースの中を覗き込む。


「もう少し、もう少しで……って俺は何をやってるんだ!」

 ノリツッコミ。あと一歩の所でフェイルは自我を取り戻し留まった。単にフェイルがスケベというわけではなく、いち男としてそうまでさせてしまう程の魅力が彼女にはあった。



「何で結晶の中で眠ってるのかはわからないけど、これは助けないと」


 ファイルは近くに落ちていた、両手で抱えるサイズの石を見つけると、大きく振りかぶって結晶に叩きつけた。

 鈍重な音が響く……が、崩れたのは結晶ではなく石。無数の亀裂が入り粉々に砕け散った。


「どんだけ硬度高いんだよ!? ここに石より固い物なんて……」


 あった。

 フェイルは背中に担いでいた剣を手に取った。確かにこの剣の硬度は尋常じゃない、だがそれはあの結晶も同じ。


 剣が折れやしないだろうか?

 それがフェイルの不穏を刺激した。大切な父の形見が折れでもしたら。そう考えると気が滅入る。眠れる彼女だってよくよく考えれば他人じゃないか、リスクを冒してまで救う必要が……。



 フェイルはそこで思考を停止させ、自分を頬を根限りに殴った。フェイルはその場に倒れこむ。


「くだらない事を考えちまった。そんなんだからいつまでも父さんの背中しか追えないんだ」


 フェイルは立ち上がると、ゴクリと唾を飲んだ。剣を結晶向けて構える。


「俺はフェイル・ディアン。父さんの見なかったその先を見て行く男だ!!」


 フェイルが渾身の一振りを結晶に浴びせると、結晶は突如強力はヒカリを放ち、フェイルの視界を真っ白に染めた。フェイルは思わずその場でしりもちを着き、段々と見えてくる景色に意識を傾ける。



 視界が元に戻った時、目の前に立っていたのは、結晶の中に眠っていた完美たる少女だった。フェイルはビクともしていない剣を見てホッと一息ついた。


「よかった、剣にも異常は無いし、何より君を結晶の中から解放出来た」



「私を殺して」


 結晶の中から開放された少女は最初に放った、突如かつ全く予想出来ない言葉にフェイルは暫く言葉を発する事も出来ず、ただその場で目を丸くしていた。

 安穏、束の間、空白。


 何故?









勇気の先にあるは現実。刃の矛先は何処に?

次回、生きる意味と悲しき運命はリアル。


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