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蜉蝣エスカピスト No.pr

2010年05月06日 16:13

 どんな世界にも、現実逃避したくなるような不条理は沢山ある。
 その不条理が誰を対象にするのかもまた、不条理で、
 時として人は、耐え難いような現実に直面することがある。
 それを人は不幸と呼び、それに耐え兼ねた時、人は殻を破ることを止める。

 蜉蝣(かげろう)エスカピスト。不幸という二文字の理由で、
 現実逃避したくなるような分厚い殻を背負ってしまった彼等は、果たして羽化出来るのだろうか。
 もし羽化した時には見せて欲しい。その透明色で優美な羽を。

  ◇

 時は2012年、4月14日。日本、某所。
 政府の勅命によって結成された秘密団体ウィズ(W.I.S)。
 ウィズは政府の厳重態勢によって、国民はもちろん、諸国にもその存在を悟られぬよう、
 秘密裏に造られた地下施設によって活動を行っている。
 その中でも重要な役割を担っている指令室によって、ことは始まった。

 管理室としても同意をなしているこの部屋では、行動時の指令のほか、
 計画思案や、外部との情報通信など、様々な重要事項が行われている。
 その指令室の指令長が放った一言により、指令室はどよめいた。

「光子進化が発生したわ」
「場所の特定は!」
 指令長は焦る指令員に対し、手を突き出し制すと、逆の手を耳に当て、神経を澄ませた。
「場所は特定中だけど、光子能力は分かったわ。能力名、限界突破(スーパーマン)。肉体強化系ね」
「限界突破(スーパーマン)ですか。いずれにしろ、パンドラに対する対抗戦力が増えましたね」
「そうね。そしてまた、2012年による無作為な被害者が増えたわ」
 指令長は重く息をつくと、立ち上がった。
「場所が特定出来たわよ。行きましょう、不条理への勧誘に」
 指令長は椅子にかけていたシャツを上から羽織ると、指令室を出た。
 それに慌てて指令員が二人、同行する。不条理の始まりが告げられた。



始まりました、カゲロウ・エスカピスト。
出だしから意味不明だと思いますが、それはりぼクオリティということで(汗)。

応援よろしくお願いします。

アリファリング No.ep メイプルストーリー

2010年05月03日 00:34

 この世界はメイプルワールド。その中のビクトリアアイランドに存在する街ヘネシス。
 緑豊かな自然と、それに調和するように安穏とした街並みが広がっている。
 この街の民家はおおよそ集合しているが、そこからは少し離れ、森林部に位置する民家がある。
 人里離れたその民家に住む少年は、艶やかな銀髪をなびかせながら、家を出た。
 背中には父の形見であったアダムの王剣ではなく、切れ味には自信のある、自前の剣を持参している。
 以前は危険を察知し、隠れていたモンスター達だったが、
 今は、殺気を全く出さず、共存の意を示しているフェイルの横を平然と通っていく。
 切り株モンスターのスタンプや、キノコモンスターのメイプルキノコが悠々を周りを通っていく中、
 スライムの群れがフェイルの前方に立ち塞がった。

「お! お前達、またやるのか?」
 フェイルは笑むと、3秒でスライムの群れを蹴散らしてみせた。
 中には真っ二つに切り裂かれたスライムもいるが、形状記憶能力を持っている為、すぐに再生する。
 スライム達は納得いかなげだったが、負けは負けと認め、追撃はしなかった。
「お前達も懲りないなあ。またいつでもこいよ」
 そう言って、フェイルは剣を担ぐと、上機嫌で歩いていった。
 スライム達にとっても、フェイルにとっても、これは恒例といったようなもので、
 お互い切磋琢磨する為のものである。といってもフェイルにとっては遊び同然なわけだが。

 フェイルが森林の奥へと進んでいると、虹色の蝶が横を通った。
「もうすぐってことだな」
 フェイルが虹色の蝶を追っていると、何やら足場が緩い。
 ここだと言わんばかりにそこの草を掻き分けると、穴があった。
「そうそう、この穴だ。あの時はうっかり落ちたからな」
 フェイルが穴に飛び込むと、穴は変わらず長い滑り台のようになっており、
 そこを滑っていると、到着地点が見えた。しかし思いのほか速度が早く減速が追いつかない。
 フェイルはしりもちをつくと、そのまま悶絶した。
「これじゃ前の時と同じじゃないか。でもケツで着地するの上手くなったかも。成長したな俺」
 そんな以前とも感傷に浸りつつも、フェイルは辺りを見回すと、感極まった。
「やっぱし二度目でも秘境は綺麗だ。というか宝石箱だなこりゃ」
 勝手に風評をつかながら、相変わらずの魅力に惹かれつつも、
 フェイルは我を思い出したように辺りを見回す。
 最果ての泉、その周辺、秘境全体。しかし全てを見回したうえで肩を落とした。
「そりゃあ結晶が再構築されてるわけないよな」
 フェイルが期待していたのは、結晶が再構築されていないかだった。
 そもそも、結晶自体が悪心の塊のような物ゆえ、そんな軽々と悪心が復活しては困るわけだが、
 やはりフェイルはアリファのことを割り切れなかったのだ。
 もし結晶が再構築されていれば、アリファがそこに居るかもしれない。
 そんな薄い望みを懸けて。その望みが叶えば、また世界は危機に晒されるわけだが。

 フェイルは最果ての泉まで走った。泉の下まで辿りつくと、あぐらをかいて、水面とにらめっこする。
 無論、いくらにらめっこしようとも、水面には自分しか映らず、結果すぐ頭をあげるだけなわけだが。
「変な話だよなあ、世界が平和であればある程、お前とまた会える可能性がなくなるなんて」
 フェイルは泉に向かってぼやいたが、何も返ってくるものはなかった。しかし、構わず話を続ける。
「お前が葬られたあの後さ、ヨシアとリツカ、なんかニマニマしちゃって。俺達は二人で旅を続けようと思う、何か大切なものが見つかるかもしれないから。とか言って俺だけ残して二人旅よ」
 手でしぐさを加えながら説明するフェイルだが、やはり何も返ってこない。
 というより、何か返ってくることを期待しているわけでもないのだが。
「大切なものが見つかるかもって、お前等もう隣にあるじゃないかって話よ。あるじゃなくて、いるが正しいかな」
 水面がそれとなく、揺れたような気がして、フェイルは乗り気で話を進めた。
「結局ボインボイン言ってたけどさ、何だかんだで相思相愛ってやつだったんだって思うよ。あいつ等」
 泉が波打ったように見えた。というより、波打った。
 偶然といえばそれまでだが、フェイルにはアリファの意識のようなものが感じ取れた。

「悪い、話がそれた。本当はさ、返しに来たんだ、指輪。あの時、気が気じゃなくて頭のどこかに吹っ飛んでから渡せなくて、今更なんだけどね。俺はアリファといつでも一緒。なんてね」
 フェイルは指から指輪を抜くと、指輪を水面にかざしてみた。
 水面には綺麗なニスのかかった木製の指輪が映る。別段高い代物ではないが、
 何故かそこらの高級品なんかよりは、一段綺麗に見えた。
「リスでこれをプレゼントした時、お前は物凄く喜んでくれたよね。俺はそれが嬉しくてたまんなくてさ、気持ちがこもった物には心が宿る。なんて言ってさ、有頂天になってたっけな」
 水面の揺れを見ながら、フェイルは陽気に話す。
「でも、もうお前は俺の中にいる。だからこの指輪は必要ないんだ。返すよ。ありがとな」
 フェイルは指輪を握った手の上に乗せると、コインを弾く要領で指輪を弾いた。
 指輪は綺麗な弧を描き、泉の中に落ちると沈んでいく。
 見えなくなっていく指輪を眺めながら、見えなくなったのを確認すると、フェイルは立ち上がった。
「さてと。長話してもなんだし、俺はそろそろ行くわ」
 フェイルは服についた、泥などをはたくと、髪をクシャクシャと掻いた。
 掻いたうえで、再度整えると、ふと息をつく。
「またね、なんて言わないよ。俺はもうここには来ない。悪心は復活しないと確信したから」
 それはすなわち、アリファはもう現れないという確信でもあり、現実とのけじめでもあった。
 フェイルが踵を返し、秘境を後にしようとしたその時、
 水面が音をたてたかと思うと、どこからか懐かしいような声が聞こえた。

「じゃあね、フェイル」
 フェイルは振り向いたが、人影はどこにもない。
 思わず、息を漏らすと、体ごと振り向き、手を上げた。
「じゃあね、アリファ」
 そう言ってフェイルは、迷いなく再度踵を返すと、秘境を後にしていった。
 フェイルがいなくなった秘境に、木々のざわめきと泉の滴る音が響く。
 空は快晴。天気からして明日もまた、晴れそうだ。



遂に完結! おめでとう俺!
なんか意味不明な小説でしたけど、最後はスパッと纏めてジ・エンド。
終わりよければオールOKということで、アリファリング完結させて頂きます。

でも何だかんだいって本当、書いてよかったです。
完結までだらだら更新だった癖に言うのもなんですけど、名残惜しいです。
もうフェイルやアリファとは話を展開していけないと考えると、なんか……はい。

まあこれは次のバネにするということで、あとがきにさせて頂きます。
本当にありがとうございました! 次回作にもご期待ください。

応援よろしくお願いします。

アリファリング No.36 愛してる

2010年05月02日 18:51

 私を殺して。そう最初に言われたのは、最果ての泉で出会った時だった。
 ただ、あの時とは違う感情がフェイルの脳裏を伝う。
 
 最初に殺してと言われた時、アリファはフェイルを間違ってないかと言った。
 虫を容易く足で潰し、面白半分で小動物をなぶり殺しにし、果てに育てた家畜を平然と喰らう。
 それなのに人は殺せないとは如何たることか、と。
 それに対しフェイルは、人が人に情を抱いて何が悪いと反論した。
 そして口論は加速し、それに終止符をうったのは、フェイルの
「生きる意味なんていくらでもあるさ」
 という言葉である。

「嫌だ、殺したくない」
 感情に従ったフェイルだったが、その言葉にはあまりに発言力はなく、だらしなく至災の間をこだました。
「私はもうもたないわ。完全に悪心に支配される前に早く」
「それでも嫌だ! 俺は、お前を……お前を失いたくないんだよ」
 目元に涙を溜めながら、フェイルは剣先を下げた。
 時間がない中、決意の定まらぬフェイルに激情することもなく、アリファはそっとなだめ続ける。
「対剣が、アダムとイヴの剣が常に争いを作るから、こんなにも悲しみが起こるのよね。だから、私が自らと共に、この対剣を時空に葬れば、こんな争いはもう起こらないわ。お願い、私を殺しテ」
 アリファの目が黒ずみ始めているのがわかった。また悪心が支配し始めているのだろう。
 こうなっては最早、アリファと悪心は共有状態にあり、悪心だけを葬るということは叶わない。
 もうアリファを救う選択肢はないのだ。ただ、世界を救うか救わないかの選択肢しか。
 フェイルには決意するか、しないかしか残されてはいなかった。

 リツカがそれを酷に見守る中、ヨシアはフェイルの背中を押すように叫んだ。
「フェイル、これが世界の性なんだ。アリファの為にも、アリファを殺せ!」
 フェイルは口の中に溜まっていた唾を飲み込むと、剣先をあげた。決意に歪みはない。
「アリファ=ベルモンド。俺はお前のことが、大好きだ」
 アリファの腹部に刺さったイヴの妃剣のすぐ隣に、アダムの王剣は並ぶように突き刺された。
 その瞬間、フェイルが堪えきれずに涙をこぼしこぼしに流すと、
 アリファはそっとフェイルの体を抱きしめた。
 シースルーの服を越えて、フェイルの肌にアリファの温もりが伝う。
「フェイル=ディアン。私も貴方のことが、大好きよ」
 アリファの目からも大粒の涙がこぼれていた。
 ヨシアとリツカが、それを忍びなくも、少しでも目に焼き付けようとしている中、
 あまりに時間がないアリファは泣き崩れるフェイルを背に、陣の上に立つ。

「至災の間よ、我を時空の歪に葬り給え」
 アリファがそう言うと、陣が光を放ち、アリファの体を発光させ始めた。
「ありがとう皆、私に楽しむことを教えてくれて。ありがとう皆、私を喜ぶことを教えてくれて」
 ヨシアとリツカが涙をこぼすのは、人間としてごく当然のことであった。
 少なかったが、日々を共にした仲間が今、時空の歪に葬られようとしている。
 大切を人を失う以上に、悲しいことがあるのだろうか。
「ありがとうフェイル、私に愛することを教えてくれて」
「アリファ!」
 フェイルは、止まらない涙を拭い続けながら、アリファを見続けた。
 今からアリファが居なくなる。もう二度と会えなくなる。
 考えてはいけないと何度思っても、そんな感情が脳裏を過ぎり、涙腺を刺激する。
 止めたいはずの涙なのに、意思に反してちっとも止まってくれやしない。
 息を荒げ、鼻をすするフェイルに、アリファは涙を流しながらも、笑顔を見せた。

「愛してる」
 アリファが微笑みながらそう言った刹那、陣から強烈な光が放たれ、フェイル達の視界は真っ白になった。
 光が収まり、目が慣れ始めた頃にはアリファの姿はなかった。陣によって、時空の歪に葬られたのだ。
 フェイル=ディアン、ヨシア=ロダン、リツカ=イタチの三人は、
 アリファ=ベルモンドが確かに存在していたということを生涯忘れないよう、記憶に深々と刻み込んだ。

 最初に息をついたのはヨシアだった。そこから一気に皆が崩れる。
 ヨシアは仰向けに倒れこみ、リツカは横向きに流れるように倒れ、フェイルはうつ伏せの体勢で泣き入った。
 消えてしまった今でも、アリファの存在感はフェイル達の中にしっかりと宿っており、
 いくらもう居ないと頭に言い聞かせても、振り向けばアリファが居る気がしてならなかった。
 フェイルは現実を受け止めたがらない自分と葛藤していると、ふとした拍子に何と関係もなく外が気になった。
 塔の中じゃわからないが、今は晴れているのだろうか。
 入った時は確かに晴れていたが、今もまだ晴れているとは言い切れない。
 ただ、外に出た時晴れていれば、少しはこの旅も報われた気がする。
 そんな緩んだ感情が、もう旅は終わったのだと告げているようで、フェイルの心は僅かばかり安らいだ。



まだ終わりじゃないですよ、次が最終話です。
というか、私が感傷モードへ突入しようとしている(汗)。
誰が見てるのかもわからない誰得小説ですが、続けてよかった!うん!

応援よろしくお願いします。

アリファリング No.35 二度目

2010年04月30日 14:56

 フェイルはヨシアに視線を向けると、端に寄るよう目で指示した。
 ヨシアにはフェイルがどれ程の決意を持って、アリファと死闘を行おうとしているのか等、
 しる由もなかったが、ここまで来れば信用するかしないか故、ヨシアはリツカを連れて端へと身を引いた。
 壁によりかかり、体制をゆるめると、世界の顛末が下るこの闘いに見入る。

 こと仕掛けたのはフェイルだった。飛び込み、剣先でアリファの喉下を突きにかかる。
 アリファはそれを不体勢のままはじくと、体勢を立て直し距離を取り直した。
「体との連結がまだ鈍イ」
「フェイル、アリファはまだ悪心と完全に連結出来ていない。攻めるなら今だ!」
 ヨシアが一気呵成に、と叫ぶが、フェイルにその声は届いていないようだった。
 交える剣から、その者の気持ちが伝わるように、フェイルにもその現象が起きている。
「何もないんだ」
「何を言ってるの? フェイル」
「何もないんだよ」
 割り込みに入るリツカさえ無視し、フェイルは伝わった気持ちに酷く同調している。
 感情に重なるように身を委ね、口をあんぐりとさせた。
「何もないんだよ、気持ちが。ぽっかりと開いた穴のように、寂しい、寂しいって」
「何もいらない。喜び、怒り、哀れ、楽し、何もいらナイ。ただ悪に」
 助長するように呟くアリファに、フェイルは目を見開き、毛立つ。
「純粋に悪。何も求めていないんだよ、何も!」
 完全に冷静さを失っていた。
 これまでの本能を、目的を持って挑んできた悪とは全く異なる、悪故の悪。
 味方と呼ぶにも相応しくなく、敵と呼ぶにも相応しくないその存在に、フェイルは戸惑った。
 その隙を見て、アリファが目をギラつかせ、駆け、距離を縮めると剣を振るう。
 殺気を感じたフェイルがその剣を避けると、剣は地面に突き刺さる。
 驚くべきは刺さった剣が容易に抜けない程まで深くめり込んでいることだった。
「何ていう力だよ。体と完全に連結されたらこんな奴止められねえぞ、フェイル、今殺るんだ!」
 剣が抜けずに、焦るアリファの表情がフェイルの瞳に映し出された。
 決意は最初からしていた。後はそれを実行するだけ、世界の安穏はすぐそこに。

  ◇

「アリファには余り肩入れしすぎるな。それがお前の為であり、アリファの為だ」
「それでも俺はアリファを護りたい。俺はアリファが好きだから」
 旅立ちの前夜、あの日決意は出来たはずだった。
 護るということは時として、対立するということ。正すこともまた、護ることだと。
 だからこそフェイルはあの時、そう言った。自分にはそれが出来るという自信があったからだ。
 好きだからこそ対立出来る。それこそが本当の愛だと、上辺の空論に身を委ねて。

「おやすみ」
 寝たふりをしながら、ヨシアが眠るのを待ってから、立ち上がり、
 アリファの隣に立つと、フェイルしゃがみ込み、熟睡するアリファの顔を小一時間眺めていた。
 リスへ向かうあの夜にあった安穏な休息。飽きることなくフェイルがアリファの寝顔を見つめていると、
 アリファは気持ち良さそうに頬を和らげながら、寝言を呟く。
「フェイル」
 フェイルは驚いたように竦んだが、それが寝言だったと察すると、ほっと息をついた。
 しかし同時に、自分の名前を呼んでくれたことに対する喜びにも満たされていた。
 寝ていても自分を頭の片隅に置いてくれている。
 この時だった。フェイルがアリファのことを今まで以上に心から愛したのは。

  ◇

「何でだろうなあ」
 フェイルは剣を振り被ると、そこでぴたりと静止した。
「今はどんな錘を着けられても動ける気がするのに、心の錘が重すぎるんだ」
「馬鹿野郎!」
 ヨシアは怒号をあげたが、それと同時にアリファの剣は地面から抜け、アリファは剣を振り被る。
 ヨシアもリツカも、声にならない叫びをあげるが、フェイルは微動だにしない。
「皆ごめん、俺やっぱり英雄にはなれなかった。世界よりも何よりも、アリファのことが大切だから」
 躊躇いもなく振るわれる剣を、フェイルは何の恐れもなく迎え入れる。
 しかし、剣先は途中から方向を変え、その脾腹を貫いたのはアリファ自身だった。
「何ダ……と」
 これはアリファ自身、意識してはいないらしく、途中から自らに矛先を変えた自身が一番驚いていた。
 フェイル達も状況を把握出来ずにいると、急にアリファが頭を押さえ込み、悲鳴をあげる。
 悲鳴が数秒を静止したかと思うと、今度はよろめきながら立ち上がった。
 貫いた腹部から大量の血を流しながら、フェイルと目を合わせる。
 この時フェイルはようやく気づいた。アリファの目が元のように澄んでいることに。
「貴方と初めて出会った時とは、180度状況も意味も違うけど」
「アリファ、お前まさか」
「私を殺して」



二度目の私を殺して。同じ言葉であれど、意味は180度異なる。

二日連続更新っすよ。本当にこというと、先日捻挫してしまいまして、
今日朝から病院に行ったんですが、学校がスポーツテストだったので、
一日見学から逃れる為に学校サボりました。
いち学生として不健全ですいません。フリーなんです、今日フリーなんです(涙)。

応援よろしくお願いします。

アリファリング No.34 最も愛した者として

2010年04月29日 22:06

 リヴァンは激痛に喚くが、虚ろになる意識を堪えながら剣で我が身を支えた。
 短く、かつ激しく呼吸を漏らすと、憎悪に満ちた眼光をフェイルに向けた。
「信念だと……勝利とは、強者を裏切らぬ現実だ」
「それは違うな。勝利とは、渇望の現れだ」
 フェイルは上を向いて、呼吸を確保しながら異論を唱える。
 言葉を選びきれぬリヴァンに、更に言葉を浴びせる。
「この結果がその証明だ。誰よりも勝ちたいと思った奴がくくる信念は、生半可には破れないよ」
 反論に転じれぬ結果論をぶつけられたリヴァンは、目を煮えたぎらせながら歯を軋ませた。
 約束されていたはず勝利が、信念という根性論によってうち破られる。
 こんなにも強さとは脆く、天地を翻すものなのかと、言葉にならぬ喚き、呻きをあげ、苛立ちを吐き出していく。
 全てを吐き出しきった時、リヴァンにただ残っていたのは、勝利に対する渇望、ただそれのみだった。

「かくなるうえは!」
 リヴァンは足元をゆるりとふらつかせると途端、アリファに駆け走る。
 フェイル達は思わず叫んだが足が出ない。油断と共に、肉体疲労も相当に達していたのだ。
 言うならば、これもまた信念なのだろう。手段を選ばぬ執念という形の信念。
 しかし、アリファに近づいたリヴァン、アリファの状態を見たフェイル達は共に驚嘆を隠せなかった。
 アリファの黒翼が、常時の倍以上に膨れ上がっていたのだ。
 リヴァンもここまでの膨張は予測の範囲外だったのだろうが、一番に目を丸めたのはフェイルだった。
「何だよあれ、何でアリファはあんなことになってるんだ」
 フェイルがその要因を知る由はなかった。
 黒翼暴走の原因はフェイル自身が倒れたことにあるのであって、
 倒れたフェイルは暴走を見ることを出来なかったからだ。
 ヨシアはそれを見て、目を、口を重くしながら唾を飲み込むに息を吸い
「アリファの黒翼が暴走したのは、お前が倒れたことで悪心が膨張したからだ」
 現実を伝えた。

 フェイルは動揺をあらわにした。口をわなつかせる。
 自分のせいでアリファに確かな異常が現れている。それは逃れない現実。
「おいお前、今の立場わかってるのか?」 
 しかしそれに浸る間さえ与えない様に、リヴァンは黒翼に包まれたアリファめがけ剣を構えた。
「やめろ!」
「こいつを殺られたくなければ、自害しろ」
 悲痛にも叫ぶフェイルに対し、リヴァンは無情な視線をフェイルの剣に向けた。
 それはその剣で自らの命を絶てということを示し、絶対的に皮肉と呼べる表情をリヴァンはあらわにした。
 しかしそれには確かに発言力が存在し、動揺をした直後のフェイルにとっては憔悴の要因となる。
「自害……」
「そうだ、自害だ自害。早くしろ」
 リヴァンが剣先を黒翼に添え、フェイルをせかせると、フェイルは手段を失い、剣先を自らに向けた。
 しかし、自害しようとするフェイルを、ヨシアは殴り飛ばし止める。
 フェイルは敵意を持った眼差しをヨシアに向けると叫ぶ。
「邪魔をするな! これは俺の責任なんだ」
「それが本当に正しい選択なのかよ!」
「ああそうだ、だから止めるな」
「ふざけないでよ! そんな選択を誰が望んでるっていうの!」
 腹から、喉から叫ぶリツカの訴えによって、フェイルはようやく自分が保つべき冷静を取り戻した。
 自害したところで誰がそれを立派だったというのか、否、誰も言うわけなどなし。
 選ぶべきは、この危機的状況から、如何にしてアリファを救出するか。
 フェイルがそう考えを纏めたその時だった。

「私に刃を向けるノハ誰?」
「なに?」
 アリファの黒翼が開くと、リヴァンはイヴの妃剣もろともアリファの中に呑みこまれた。
 黒翼ががっちりと閉じ、また球状になると、骨の砕ける様な鈍い音が球内に篭る様に響く。
 黒翼が再度開くと、そこには見るも無残な、全身の骨が砕かれたリヴァンの姿があった。
 ぬけがらの様にアリファから滑り落ちたリヴァンは、生きてはいないことが容易くわかった。
 イヴの妃剣を手にしたアリファは目を開く。
 しかしその目はいつもの様に明るく澄んでおらず、黒く淀みきっていた。
「アリファ?」
 半ば放心気味に呟くフェイルに、アリファは自然なながれで言葉を返す。
「そうよ、私はアリファ=ベルモンド。ただし、悪心の方のね」
 しかしその口元からは、何かしら侮蔑の様なものが感じ取られ、
 アリファは最早アリファでなくなったということを示していた。
「これは想定出来なかった。悪心の暴走なんて。でも、最悪のパターンだな」
 ヨシアは銃を構えた。しかしフェイルはそれを制すと、自分が剣を構えた。
「元はと言えば、俺からの始まりだ。けじめも俺につけさせてくれ」
「お前、本当にアリファを殺れるのか」
 ヨシアがもった不安はヨシアにアリファが殺せるのか、ということだった。
 リツカも同様の疑問を抱いた様を示している。一瞬、戸惑うフェイルだったが、それは本当に一瞬であった。
 敵になるとは想定していなかったが、もしもアリファが死んだ時を、
 フェイルは旅の初日、ヨシアと話し、けじめをつけていたからだ。
 肩入れはしていた。アリファのことは好きだった。だが、敵になった以上倒すのみ。
 非情だがシンプルな理論に対し、フェイルは決断を下していた。
「アリファ、お前が道を踏み外したのなら、その顛末へ導いてやるのも俺の役目だ。最も愛した者として」
「同情? 友情? 愛情? 戯け」
 しかと剣先を向けるフェイルに対し、アリファも剣を構える。
 粗く言えばタイマン。世界はそれに託された。



更新に間が開いてすいませんでした。悪い癖が(汗)。
佳境なので頑張って更新します!

応援よろしくお願いします。



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